悪魔王子の旦那様は今日もツンとデレている

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チラッと目線を上げれば、奥歯を噛み締めたルーカスが相変わらず険しい表情をしたまま、私の腰を引き寄せた。 そして私の頬に大きな手のひらが添えられる。 (覚悟を決めなきゃ) 私は近づいてきたルーカスの顔を見て、ぎゅっと目を瞑った。 (我慢我慢我慢………) どのくらい目を瞑っていただろう。いつまでたっても何も起こりもしなければ唇になにが触れるわけでもない。 しびれを切らせた私が両目を開けようとした、その時だった。 「──やめだ」 (え?) 「なぜこの俺が誓いのキスなどをせねばならないっ!」 (はぁっ?!) 見れば鬼のような形相をしたルーカスが神父を睨みつけている。 「いや、そのルーカス王子様……決まりごとでして……」 「面倒だ!省略しろ!」 (面倒ですって!?) ルーカスはそう言って私から離れると神父の目の前に行き詰め寄った。 「早く式を進めろっ」 「いや、しかし……っ」 そのやりとりを見ながら私の手は怒りからフルフルと震え出す。 (なんなの自分から結婚しろって言ったくせに) (そんなに私とキスするのが嫌なわけ……っ!!) (私だって嫌よ!!) 溢れそうになってくる怒りを私は深呼吸と一緒になんとか喉の奥深くに飲み込んでいく。 本当は今すぐにこんな結婚もうやめだ、と叫んでしまいたい。これは利害関係のためだけの一年だけの契約結婚なのだと、皆の前で叫べたらどれほど楽になれるだろうか。 (でもお母様を殺した犯人を見つけたい……) (なにを、誰を利用してでも) 私は無理やり笑顔を貼り付けるとルーカスの横に並んだ。
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