悪魔王子の旦那様は今日もツンとデレている

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※※ 「眠ったな……」 俺は長いまつ毛を揺らしているリリーを見ながら、リリーの肩まで毛布をかけ直した。リリーは本当に百合の花のように色が白い。 「俺の妻なんだな」 俺はリリーの左手薬指に光る結婚指輪に思わず頬を緩ませた。結婚式ではリリーからの熱烈な口付けに全身の血が逆立って頬が紅潮し、自室に戻ってからも呼吸もままならない程に動悸が(おさま)らなかった。これは到底リリーと並んで食事などもってのほかだと察した俺は急遽、晩餐会を取りやめたのだ。 「悪かった」 (しかしながら緊張で……俺から口付けることができなかったのを気づいてくれるとは……) リリーは本当に聡明で機転がきき、世界で一番美しい。 (俺には勿体無い女性だ) そして俺は自身の左手につけている結婚指輪に視線を移す。 そこには銀の台座の中央に小さいピンク色のダイヤが嵌め込まれている。 「気づいてないだろうな……互いの瞳の色の宝石を指輪にしただなんて」 俺は生涯リリーのもの、そして生涯リリーが俺のそばにいてくれるようにと願いを込めたことをリリーは知る由もないだろう。 「きゅう」 「ん?」 可愛らしい声と共にリリーの枕元からこちらにやってきたラピスに俺は目尻を下げた。 「さっきは嘘をついて悪かった。ずっと俺のことを覚えていてくれたのに」 「きゅうきゅうっ」 「あとナッツはどうだった? 食べたか?」 「きゅ〜っ」 「ははっ、それは良かった」 俺はリリーがナッツアレルギーと知った上であえて料理長に食事に出すよう伝えた。リリーは自分が食べられないナッツをラピスに与えるはずだと俺は踏んでいたからだ。 そしてリリーにはバルコニーでラピスに初めて会ったかのように話したが本当は違う。 俺がラピスとリリーに出会ったのは今から十年ほど前だ。森で獰猛な熊にリリーとラピスが襲われていたところを偶然見かけた俺が助けたのが始まりだ。 あのとき、俺は恋をした。 そして約束したんだ。 もしまた会えたら──俺が生涯守ると。 ──そして誰よりも愛し慈しむことを。
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