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「うさぎは人間の十倍嗅覚が優れているというが本当だな」
「きゅきゅう〜」
「俺の髪色が違っても覚えていてくれるとは嬉しいぞ」
俺は甘えてくるラピスの首元を優しく撫でてやる。
「お前がリリーのそばでずっと守ってくれていたんだな。ありがとう」
「きゅうっ」
「安心しろ。これからは俺が命に代えてもリリーを守る。そして必ず犯人を探し出す」
ラピスは頷くように俺の指先をペロリと舐めると俺とリリーの間で丸くなった。
今夜は生きてきて一番幸せな夜だ。
愛しいリリーと可愛いラピスの寝顔をこんなに近くで眺めることができるのだから。
「呪われた結婚、か」
俺はふっと吐息を漏らした。
「ある意味、呪うほどに愛しているのは事実だがな」
俺とリリーの“呪われた結婚”と呼ばれる恋物語はまだ始まったばかりだ。
リリーを前にすれば緊張と恥ずかしさから頭が真っ白になって、気の利いた言葉も思いやりの言葉もなにひとつ出てこない。そんな情けない俺だが、胸の奥深くに秘めたリリーへの愛情だけは誰にも負けない自信がある。
どれほど伝えられるかわからない。
それでも諦めることだけはないだろう。
「──愛してる」
この言葉をちゃんとリリーに言うまでは。
2024.7.6遊野煌
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