<27・黒幕。>

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<27・黒幕。>

 戦乱の世を終わらせる。  その言葉に、蘭磨は冷たいものが走った。 『浅井長政ほどの人物が、あの方、と呼ぶほどの人間。恐らく、別の誰かから命令を受けている、のだと思います。それが誰なのかまではわかりませんでしたが』 『うおう……なんかものすごい大物が出てきそうな嫌な予感がするのーう……』 『右に同じ』  エリオットたちとそんな会話をしたのはつい先日のこと。浅井長政に命令できそうなくらいの大物と言った時、この人物の名もなんとなくは思い浮かんだのだが。 「……まさか、徳川家康って言うんじゃないだろうな、そのお方とやらって」  蘭磨が呻きながら言うと、ぱちぱちと凛空と律子が同時に手を叩いてみせた。よくできました、と言わんばかりに。 「江戸幕府を開き、戦乱の世を終わらせた平和の偉人よな。まあ、過去の僕達にとっては敵であり、織田信長からすれば味方であったはずの人物ではあるが」 「あ、あああああああ……」 「ちょっとまてちょっとまてちょっとまてちょっとまて」 「うわああ」 「……そういえば、そのような方もいらっしゃいましたねえ……」  頭を抱える信花、思わず突っ込みがとまらない蘭磨、天を仰ぎ見るしのびに冷や汗をかくエリオット。いやはや、正直出てきてほしくない名前が出てきてしまったと言うべきか。  いや、だがその目的が私利私欲のために玉を使うというのではなく、玉を使って平和を齎すと言われてしまえば納得できない話でもないが。 「あのお方……家康殿はかねてより、玉はしかるべき者が平和のために使うべきと考えておられたようだな」  凛空はそんな自分達を見て肩を竦める。 「そして、玉の力なくしてこの世に真の平和もないというのがかの人の考えだ。江戸幕府を開くのも、玉の力があればもっと楽にできたであろうに」 「あ、そこは宝玉の力じゃないんだな」 「そのあたりの流れは史実とさほど変わらんからな。かつては敵対したこともある僕達だが、家康殿の考えには感銘を受けた。同時に、何がなんでも信長殿に宝玉を渡してはならぬというのも」  す、と彼は目を細める。 「宝玉を滅ぼすことは不可能。ならば正しき者が正しきやり方で宝玉を管理し、使い、世を太平に導くことこそ正義。そもそも影の鳥を組織されて暗躍されていたのも、家康殿が宝玉を使って平穏な世界を作り上げたいと願っていたからこそ。……織田信長。お前がもし宝玉を持つに相応しい存在と家康殿が考えていたのであれば、本能寺の変であれだけの犠牲が出ることもなかっただろうな」  そういうことだったのか、と蘭磨は呻くしかない。
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