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<28・律子。>
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
何人もの男達が、雄叫びを上げながらこちらに向かってくる。元々持っていたものなのか持たされたものなのか、全員なんらかの得物を持っているのが厄介だった。
「ちょ、ちょっと待ってください、ちょっと!」
振り上げられた金属バットを、どうにか真横に飛んで避けるエリオット。筋力も強化されているのか、バッドは地面に叩きつけられると同時に大きく土を抉っていた。
「多少罠があるとは思っていましたけれど、ちょっと人数多すぎやしませんか!?」
「それな!」
一人二人三人四人――合計、ざっと見ても三十人はいるような。自分達三人を始末するために、一体何人の傀儡を用意したのやら。
「殺してしまえば話は早いんですけど、残念ながら操られているだけなのですよね、この人たち。死なせたら、わたくし達が殺人罪に問われます。それは困りますわよね」
「間違ってないんだけどちょっとズレてるぞしのぶさん!?」
殺人罪に問われなかったら殺してもいいんかい、と思わずツッコミたくなる蘭磨。そういえば、既に襲撃を受けたことがあるとか言っていたような。うっかりもう人を殺したことありますし、とか言いそうで怖い。いやいや、いくら常識がかっとんでいるっぽいしのぶでもそれはないと信じたいが。
「希え、“藍蘭浄罪”!」
一人ずつ解除していくしかないか。日本刀っぽいのを持って切りかかってきた若い男の懐に飛び込み、蘭磨はその首に真っすぐ不動行光を突き出した。喉をオーラの刃で貫かれた男の体がのけぞり、がっくりと力が抜けていく。
やはり、自分の能力ならば洗脳を解くことはできる。だが。
「蘭磨さん!」
「!」
目の前に落ちる影。ぎょっとして振り返れば、すぐ後ろにハンマーを振り上げた男がいた。とっさにエリオットが間に飛び込み、鉄扇を一閃する。
ずしゃっ!と血飛沫が舞った。エリオットが男の右手首を切り裂いたのだ。男の手から力が抜け、ハンマーがずるりと地面に落ちる。
「すまん、エリオット」
「いえ」
エリオットは扇子を構えて蘭磨を守るように後ろに立った。
「あまり怪我させたくないんですけど、多少はやむをえませんです。手足を傷つければ、多少動きを鈍らせることはできるでしょうし」
「だな。……参ったぜ、人数多すぎ。一人解除してる隙に他の奴が襲ってくるっていうアレ」
「まだこちらは三人いますからカバーもできますが、正直人数的にはキリはないですよね」
「ほんとそれ。どうすっかなあ」
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