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<29・決着。>
自分達が外で律子とドタバタやっている間に、工場の中でも激しい戦いが繰り広げられたのは明白だった。信花も吹き飛ばされたか殴られたか、頭から流血して膝をついている。しかし。
「ふ、はははっ……」
不思議なことに。負傷している信花の方が笑っていて、凛空は驚いた顔をしているのだ。
「のう、凛空よ。賭けは、儂の勝ちだな?」
彼女はふらつきながらも、ゆっくりと立ち上がった。
「おぬしは、儂がそなたに倒されるまで、外から援軍が来ることはないと言った。律子の力を信じておると。じゃが、儂もこう言った。儂一人でそなたを倒すのは難しくとも、必ず儂の仲間は儂が倒れるより先に駆けつけてくると。……そなたが律子を信じているように、儂も蘭磨たちを信じておるからの!」
どうやら、そんなやり取りがあったらしい。なんでこっぱずかしい賭けをしていたんだ、と蘭磨は頬が熱くなった。
同時に嬉しいと思う自分がいるのも事実だ。――命懸けの戦いの中で、そこまで自分達を信じてくれていた、ということに。
「……そうだな、この賭けは僕の負けだ。律子はフルパワーで技を使ったし、彼女の君と蘭丸への怒りは本物だった。なんならお前が倒れるより先に、彼女が蘭丸たちを倒すこともありうると思っていたが」
凛空は刀を構えて、にやりと笑った。
「認めざるをえないな。お前たちの力は本物だと。……だがしかし、クダギツネの調査結果によれば、お前たちは出会ってまだ一か月くらいしか過ぎていない間柄だろうに。よくそこまで信頼関係が築けたものだ」
「クダギツネって……」
「すみません、蘭磨くん」
エリオットがばつが悪そうに言った。
「彼らの下についていた時、クダギツネの調査能力を使いました。蘭磨くんたちの身元が全部筒抜けになっていたのは完全に私のせいです」
まあ、それはしょうがないことではある。彼も洗脳されて、恨みを募らせていたのだから。
「……確かに、付き合いは短いよ、俺たち。それに、記憶だって全部戻ってないしな。……何もかも信じられるとか、そこまで言うつもりはないさ」
蘭磨は肩をすくめて言った。
「何で信じられるのかとか、何でついていくとか。そういうのいつも理詰めで考えてたけど……信花と一緒にいると段々、そういうのどうでもよくなってくるんだよなあ。うまく言えないけど」
「お前は成績優秀な真面目系男子だと聞いていたがな」
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