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「はははは、自分でもわりとそう思ってた。でも、なんか、わかっちゃったんだよな。……感情のまま、気持ちのまま突っ走るのも結構きもちーなって」
大切なものは多くていい。
一人で何もかも守ろうとしなくていい。
もうすでに、たくさんの人を好きになっていることを――認めてもいい。
信花に言われて、目を背けていたことに気付いてしまった自分がいる。
「なんか信花が気に入ったし、面白いからついていく。それで何か守れるかもっていうならそれでいい。……そういう風に思うようになっちゃってさ。多分、他の奴らもそうなんじゃねえかな」
人を嫌いになるのには、理由が必要かもしれない。
でもきっと、誰かを好きになるのに――理由は要らないのだ。
「……そうか」
凛空は目を閉じて、静かに頷いた。
「わからんでもない。……僕もそうだったしな。遥かに年上なのに、伯母なのに……前世の記憶と共に理解できたのだ。何故、自分が律子を一人の女性として愛しているのかを。……好きだから、好き。理屈など、それでいいのかもしれん」
「ああ。だから、守りたいんだろ、お前も」
「その通り。……僕は宝玉の力で、理不尽がない世を望む。僕のような、腐った親に虐げられる子供がいないセカイを。律子が心から笑っていられる世界を。ゆえに、お前たちとは相いれない。……決着をつけよう」
「ああ」
きっと。
自分達が知らないところで、彼も辛いことがたくさんあって、汚いものをたくさん見て、その上で決意したのだろう。前世でも現世でも、人の本質なんてものはそうそう変わらない。変えられないことに、絶望して、それでも絶望を打ち破ろうと足掻いた結果なのかもしれない。
でも、だからといって自分達も負けるわけにはいかないのだ。
信花の、信長の理想を叶える。宝玉の力を求めるがゆえに争いが始まるならそれを阻止する。自分の命を守り、それによって誰かの笑顔をも守ると決めた。
例えそれが、どれほどいばらの道だったとしても。
「気をつけろ、蘭磨」
こそ、と信花が耳打ちしてきた。
「奴は炎を操る。炎の竜巻も炎の壁も本質は同じ。炎で焼き尽くすと見せかけて、その隙間から斬撃を放ってくるのじゃ。炎は剣圧で吹き飛ばせても斬撃が防ぎきれなくて儂はこのザマよ。あの無数の斬撃を防ぎきるのは容易ではないぞ」
「なるほど、そういう技か」
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