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信花の光の刃が、しのぶの黒い烈風が、エリオットの紫の竜巻が、そして蘭磨の藍色の槍が天井の四隅を同時に破壊した。途端、ばきばきばきばき、と音を立てて天井に亀裂が走っていく。
「な、なに!?」
予想していなかったのだろう。焼け焦げた天井が砕け散り、凛空の上にと次々崩落していく。
「あ、ああああああああああああああああああああああああああああああ!」
悲鳴。段々と壁にも亀裂が走ってきたのを見て、蘭磨は慌てて叫んだ。
「ちょ、これやばい!みんなも退避、退避!」
「わわわわっ!」
思った以上の威力だった。二階の床どころか、二階そのものが崩落しようとしている。蘭磨たちはそれぞれ扉や窓から脱出した。一発逆転の手として有効ではあったが、少々強力がすぎたようだ。
工場がガラガラと音を立てて崩れていく。慌てて敷地の駐車場まで飛び出したところで、崩れた瓦礫の隙間から炎が噴き上がった。
「マジか」
炎の竜巻の中から現れたのは、傷だらけの凛空と律子だった。目を覚ましたらしい律子は、忌々しいという表情を隠しもせずこちらを睨んでいる。
「なんて滅茶苦茶な……!長政様、追撃を……」
「いい」
まだブチギレている様子の律子を、凛空が制した。
「こちらもかなり削られた。それに、そろそろ狭間の空間の効果が切れる。さすがに現実世界に戻ってしまったら戦いは継続できん。……それに、お前は力を使い果たしているだろう。不利だ」
「で、ですが長政様!」
「いい。……最低限の目的は果たした。我々の立場をはっきりさせる、という意味ではな」
え、狭間の空間って時間制限あるの!?と蘭磨。ぎょっとして振り返ると、しのぶ、信花、エリオットはそれぞれ明後日の方を向いた。完全に教え忘れていたという顔である。お前らなあ!と蘭磨は呆れるしかない。ちょっと大事なウッカリが多すぎではなかろうか。
「織田信長、帰蝶、織田信忠……そして森蘭丸よ!」
瓦礫の上に立ち、浅井長政――浅井凛空は、よく通る声で告げた。
「今回はここで退こう。……だがしかし、忘れるな。真の平和を求めるならば、綺麗事だけではまかり通らぬということを」
凛空がポケットから黒い珠のようなものを取り出して投げる。すると霧のようなものが溢れ出し、二人の体を包み込んでしまった。
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