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「儂は……儂は結局、何一つ守れなかった!森の中、逃げている時何度も何度も己を呪うた、己の無力を嘆いた!大義のためとはいえ、儂一人生き延びてなんとする?最愛のおぬしを守れなかったこと、儂は転生してもなお忘れることはできなんだ!」
「信花、お前……」
「もう二度と、そなたを殺させたりはせん。どんな理由があったとしても、あの日そなたの手を放してしまったこと、儂は地獄で悔んでも悔やみきれなかったのじゃ。だから、そなたの傍にいるために父に頼み込んで転校までさせてもらった。全部全部、そなたを守るためじゃ!だから、どうか……!」
どうか、守らせて。
最後の声は、勇ましい武将ではなく、か弱い少女のもののようだった。
「……ご自分でもわかってるではありませんか」
そんな信花を呆れたように見る、しのぶ。
「その者の存在そのものが、父上の心の傷となっておられる。結局父上は本能寺から逃げのびてすぐ討たれてしまった。後悔に、未練に、足を取られてしまったから。そうでしょう?」
「違う、しのぶ!儂は……!」
「そのようなもの、大義の前には不要なのです。あなた様には、成し遂げなければならない使命があるはず。わたくしが、思い出させてあげますわ。くだらない愛があるから余計なものが見え、道に惑ってしまうということを!」
「違うと言うておるではないか、このわからず屋め!」
ぎゃいぎゃいと騒いでいるあたり、信花の傷は大したことないようだ。そもそも、しのぶはあくまで蘭磨を排除したいのであって、信花のことを助けたいと思っているはず。致命傷を与えるような真似などしないだろう。
この状況は、あくまで蘭磨がいるせいで起きている。間違いなく、蘭磨が元凶であることを自覚しなければいけない。よくわからないが、狭間の世界とやらだということは、この世界に他に人はいないのだろう。巻き込む心配もないし、多少モノを壊してもどうにかなるはずだ。だったら。
――何か、できることが……使えるものがあるはずだ!
信花もまだ、付喪神の力とやらを本格的に使っていないように見える。自分がしのぶに隙の一つでも作れば、その間に攻撃を当てて倒すこともできるのではないか。
正直なところ、遠隔で攻撃できるしのぶ相手ではかなり分が悪い。傷を覚悟して接近すれば一太刀くらい浴びせられるのかもしれないが、さっきしのぶは一瞬で弓への攻撃から握での防御に切り替えてきた。かなり戦い慣れしている。なんなら、弓でぶん殴るくらいのことはできそうだ。上背もあるし、お互い覚醒者だと考えるのならばとっくみあいになれば信花の方がかなり不利と言うことも考えられる。
ならば。
――あれだ!
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