<6・現実。>

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「もしまた蘭丸が傍にいるのなら、その時は蘭丸が……本当に、父上に愛されるに相応しい存在か、見極めてやろうと思ったのです。もし傍に置くなら、何がなんでも覚醒させないといけませんしね。……残念ながら、その目論見は外れて、結局蘭磨くんは覚醒することなくわたくしに勝利してしまったわけですが」 「しのぶ、さん……」 「父上。それから……蘭磨くん。ご無礼を、申し訳ありませんでした」  ああ、そういうことだったのか。なんだかストンと腑に落ちた。  彼女はけして、“父”に歯向かったわけではない。織田信長に最後まで付き従った愛息子、その心は現世でも変わっていあんかったというわけだ。  父を敬愛するからこそ、父が元々“使えない部下は切り捨てる”厳しい人だったと知っているからこそ。本当に、現世の森蘭丸が信長の傍にいるにふさわしい人間かを確かめたかったに違いない。  そして嫉妬、というのも間違いないのだろうなと思う。  織田信長と森蘭丸が恋仲だったかも?という話は昔からよく言われる話だが。この様子だと、この世界の歴史ではかなりガチだった、ということだろう。今目の前にいる信長=信花が美少女であるせいで、いまいちBLと言われてもピンとこないが。 「まあ、そんなことであろうとは思っていた。儂に対する攻撃に殺意がなさすぎであるし、蘭磨への攻撃もめっちゃくちゃ手加減しておったからのう」  呆れたように頭を掻く信花。 「おぬしが知りたいことに答えようぞ、しのぶ。といっても、少々不完全燃焼かもしれぬがの」 「というと?」 「儂は、自分が死んだ時の記憶が朧気でな。特に本能寺の変のあたりからは断片的にしか覚えておらなんだ。最終的に蘭丸と光秀が儂を命懸けで逃がし、蘭丸が儂のかわりに首を撥ねられたことは知っておる。本当の歴史では、蘭丸は儂が見込んだ剣の達人であり、儂ほどではないにせよ名の知れた剣客であったしの。……まあそんなわけだから、実は宝玉の行方もわかっっとらんのだ。儂が持って逃げたのか、あるいは光秀が持っていったのか、もしくは蘭丸がどこかに隠したのか」  ただ、と彼女ははっきりと告げた。 「どこにあっても、関係ない。儂は、自らが戦国の覇者と決めた時に決意したのだ。……星の宝玉は、必ずこの手で破壊すると。その心は、今も変わってはおらぬ」  破壊。  まさか、手に入れて願いを叶えるためではなく壊すために動いていたとは。  きょとんとする蘭磨に、驚いた顔をしとるのう、と信花は苦笑した。 「これ、最初に言いだしたのは儂ではなく蘭丸であったのだぞ?儂はその信念に感銘を受けたにすぎぬ」 「え、え?そう、なの?」
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