<7・宝玉。>

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 なんだろう。自分が知っている織田信長と随分違うような。あまりのイメージの乖離に混乱してしまう蘭磨である。 「そのようなもの、身内の贔屓目というだけよ。山ほど人を殺したことに変わりはないわ。いくら……玉の力の暴走によって、発狂した者達を強引に鎮圧した、であったとしてもな」  戦でもとてつもなくたくさんの人を殺したわ、という信花。そういえば、彼女は幼稚園の頃に、織田信長としての記憶と覚醒を果たしたと聞いている。  そのような小さな少女に、信長の記憶はあまりにも重いものだったのではないか。苦しくはなかったか、悩みはしなかったか。  それとも、彼女はその強い意思で、織田信長だった自分と信花としての自分に折り合いをつけたのだろうか。 「宝玉の力は強すぎる。それを手にした者は、世界を手にすると言っても過言ではない。宝玉の力を使って破滅した者は数知れず。だからこそ、欲する者も少なくはない。……父上は蘭丸の言葉もあって、いつしかこの国の覇者となり、宝玉を手に入れて破壊し、真の安寧を作り上げることを目標にされるようになりました」  しのぶはやや眉をひそめて告げた。 「ところが、父上が苦労の末宝玉を手に入れたものの、破壊する方法がなかなか見つからなかったのです。一見すると水晶か何かのように見えるのに、叩いても斬っても殴っても壊れなくて」 「まるでSCPだな……破壊耐性アリの」 「ああ、まさにそんなイメージです。そして破壊する方法が見つからないうちに、父をある巨大な勢力が狙っていることがわかりまして。その者達の目を欺くためには、一度父が死んだことにするしかないと、そのような結論になった……そう記憶しておりますわ。申し訳ないながらわたくしは直接計画に噛むことができませんでしたので、朧気にしか知らないことなのですけれど」  最後に宝玉を持っていたとされるのは、織田信長。あるいは、彼を救う計画を知っていた森蘭丸と明智光秀のどちらか。  ゆえに、この三人は令和の世でも狙われる可能性が高いとしのぶは踏んでいる――と。そこまでは理解している。 「星の宝玉については、ほとんど何もわかっていないに等しいのだ」  ゆったりとアスファルトの道を歩き、信号の前で止まるしのぶ。もちろん蘭磨も後に続く。 「別の世界から来たと言う者もおる。天照大神が授けてくれたものだと言う者もおる。実際儂も、この宝玉を手に入れるまでは破壊耐性があろことさえ知らなんだ。ただ、それでもはっきりしていることがある」  険しい顔で振り返る、しのぶ。
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