<8・金持。>

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 そういえば、しのぶはそんなことを言っていたなと思い出す。 『ああ、まさにそんなイメージです。そして破壊する方法が見つからないうちに、父をある巨大な勢力が狙っていることがわかりまして。その者達の目を欺くためには、一度父が死んだことにするしかないと、そのような結論になった……そう記憶しておりますわ。申し訳ないながらわたくしは直接計画に噛むことができませんでしたので、朧気にしか知らないことなのですけれど』  強大な勢力。  戦国の世のことだ。裏で何が動いていてもおかしくはないが。 「織田信長、が死んだことにせねばならぬほど強い力だった。そうであるな?」  信花の言葉に、ええ、と頷くしのぶ。 「実のところわたくしも父も、その正体を掴めてはいなかったのです。いくつか怪しい家や人に忍を送って調べさせようとしたのですが、悉く相手に辿り着く前に連絡が途絶えてしまって」 「よほどの手練れだったということよな」 「同時に、こちらの動きが全て漏れていたということ。正直なところ、わたくし、父上、蘭丸、明智殿……それ以外のほとんどの者全てが、裏切者の可能性がございました。当時の我々では、それを完全にあぶり出すことは叶わなかったのですわ。……父上の盃に毒を盛る者も耐えなかった始末ですし」 「まあ、儂は元々多くの者に恨まれておったから、宝玉とは関係ない暗殺者だったかもしれんがの……」  ただ、としのぶは続ける。 「その者達を、我々は“影の鳥”と呼んでおりました。そして、今の令和の世でも、影の鳥自体が復活している可能性が高いのです。少なくとも、当時の世を生きていた名のある武将のいずれかが指揮をしていたのは間違いないことでございますから。その何者かもまた令和の世に転生してきているのなら、必ずや再び戦となりましょう」  いくさ。  改めて言われると、随分重い。しかも、相手はしのぶのように、狭間の世界で安全に戦ってくれるとは限らないのだ。 「……俺は、どうすればいい?」  一刻も早く、力を目覚めさせなければいけないのだろう。しかし、どうすればいいのか。 「どうすれば、森蘭丸の力を覚醒できる?」  人でなくなってしまうのも、力を得るのも怖い。しかし、怖い怖いと言っていたら何も守れないのは事実。  真っすぐに見つめる蘭磨に、しのぶはにやりと笑って言ったのだった。 「特訓ですわね、蘭磨くん。……父上の足手まといにならないよう、びしばし鍛えて差し上げますわ!」
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