<9・特訓。>

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『もう二度と、そなたを殺させたりはせん。どんな理由があったとしても、あの日そなたの手を放してしまったこと、儂は地獄で悔んでも悔やみきれなかったのじゃ。だから、そなたの傍にいるために父に頼み込んで転校までさせてもらった。全部全部、そなたを守るためじゃ!だから、どうか……!』  自分を守るために、しのぶに立ち向かってくれた彼女。  その姿をかっこいいと思うのと同じくらい、悔しかったのだ。  足手まといになりたくない。それもまた、ただの意地でプライドなのかもしれないけれど。 ――くっそ……くそくそくそくそくそ!いくら女顔とか女みたいなやつとか言われたってな……俺だって男なんだよちっくしょう!  ここで退いたら男が廃る以前に、人間として終わっている気がする。  そう思って蘭磨は仕方なく、しのぶの特訓を受けることにしたのだった。 「おおおおおお、走るだけというのは気楽だのー!」  ちなみに信花も一緒に訓練に参加しているが、もう1キロは走っているのに息一つ乱していない。そして彼女の速度についていけない蘭磨は、すっかり周回遅れとなってしまっている。 「ああああああもう、悔しいんだっつの!」  やっぱり、覚醒すると体力も段違いになるのだろうか。なんとなく信花の場合は元々こうだったんじゃないか、という気もしてしまうのだが。 「!」  殺気。  はっとして部屋の真ん中を見れば、しのぶがいつのまにやら弓矢を顕現させているではないか。  攻撃が、来る。走っている相手を狙うのは向こうも簡単ではなかろうが、それでも。 「行きますわよ、コノハテング!“黒ノ散弾!”」 「わああああああああああああ!?」  彼女が放った矢が分裂し、まるで散弾銃のようにバラけてトンできた。こんな攻撃もできるのか、と右に左に避けながら思う蘭磨。そういえば、彼女はだいぶ戦い慣れているようだし、既に何度も刺客と邂逅して勝ってきたということなのかもしれない。 「ほらほらほらほら、馬鹿正直に走ってるだけだと当たりますわよおおおお!」 「嬉しそうに言うんじゃねええええええええ!」  なんだろう、妙にしのぶがイキイキしているような! ――ああもう、やればいいんだろ、やれば!  相変わらず楽しそうに走り続ける信花をよそに、しばし蘭磨は悲鳴を繰り返すことになるのだった。  侍への道は、長く険しいようである。
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