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美人とかどういうのはどうでもいいから、話して楽しい奴がいいな、と。
――できれば、遊戯王わかる奴だといいな。女子でもカードできる奴いるらしいし……。
そんなことを思っていた、まさにその時だった。遠くから、先生の叫ぶ声が聞こえてきたのである。
『ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待って織田さーん!』
それから、どたどたどた、と力強く歩いてくる足音。なんだなんだ、と思ってドアの方に視線が集まる。次の瞬間、ばばーん!と叩きつけられるようにスライドドアが開くのが見えた。
そして。
「あ……」
大股でどかどかと教室に乗り込んできたのは、空色のランドセルを背負った少女。
長い長い、しっぽのようなポニーテール。きりっとした気の強そうなまなざし、健康的に日焼けした肌。ぱっちりとした目、桃色の唇。それから、小学生離れした長身。
蘭磨は言葉を失っていた。正直、テレビでも見たことがないくらいの美少女がそこに立っていたものだから。
「諸君!」
そして彼女は。
先生が教室に飛び込んでくるよりも前に白いチョークを手に取ると、思いっきり黒板に名前を書いたのだった。
織田信花。
織田をでかく書きすぎて、信花の文字がだいぶ小さくなってしまっている。
「皆の者、ご機嫌よう!儂が、今日からここに転入してくることになった、織田信花であるぞ!」
ふひゃ!?と思わず変な声が出た。
一人称、儂。
まるで侍のような変な口調。それから、名前。まるで、織田信長のような。
「儂は、かの織田信長が転生した存在である!大切なものを取り戻すため、この学校に参った次第!」
しかも、彼女はそのまま教卓を飛び降りると、つかつかと蘭磨の方に歩み寄ってきたのである。ぽかん、とする蘭磨に、彼女はにっこり笑って抱き着いてきたのだった。
「会えて嬉しいぞ、我が愛しの者……森蘭丸よ!」
「は、は、はいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
その日。うちのクラスに衝撃が走った。
前世が織田信長と名乗る侍口調の美少女が、蘭磨のことを森蘭丸と呼んで飛びついてきたのだから。
これが、全ての始まり。
嵐のような少女と蘭磨の出会いだったのである。
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