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<11・駄々。>
一週間も過ぎればわかってくることがある。
そのうちの一つが――誰かさんの成績が壊滅的に悪い、ということだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおん!嫌じゃああああ、儂も蘭磨と一緒に帰るのじゃああああああああああああああああああああああ!補習なんて嫌なのじゃああああああああああああああああああああああ!!」
黒髪ポニーテールに長身の美少女十二歳は、現在廊下にひっくり返って駄々をこねているところだった。
放課後。さあうちに帰るか、と蘭磨が信花と一緒に教室を出ようとした矢先のことである。自分達、性格には信花は先生に声をかけられ、現在絶望の淵にいるのだった。
「……信花」
蘭磨は引いていた。ものすごく、引いていた。
「小学校六年生にもなって、恥ずかしいと思わないのか……引く」
「そんなシンプルにディスるでないわ!儂は、儂は蘭磨と一緒におうちに帰るのじゃ!いつもの通りしのぶの家で特訓がしたいのじゃあああああああ!」
「そう思うならなんでちゃんと勉強しないの、ねえ!?」
自慢じゃないが、蘭磨はかなり成績が良い方である。一方、信花は――授業中が基本的におやすみタイムだった。授業を聴いているとソッコーで眠くなってしまうらしい。
いや、わからなくはない。わからなくはないのだが、毎回のようにイビキをかいて爆睡し、先生に叩き起こされても目を離した十秒後にはまた寝ているというのはいかがなものか。
当然、そんな有様でテストで良い点が取れるはずがない。
――マジで初めて見たわ……リアルのび太くん。
マスターオブゼロの称号を与えたろか、と思うほどの出来栄えだった。いやまさか本当に、公立小学校のテストで、名前を書き忘れたわけでもなんらかの障害があるでもなく、本当にただ“勉強ができなさすぎる”だけで0点を連発する猛者がいようとは!あんなもの、漫画の中だけの出来事だと思っていたのに。その結果、先生に呼び出しを食らうのだからもう自業自得である。
そもそも小学校のテストは、漢字テストや計算テストを覗けば四択問題が非常に多いのである。読解問題だって、“以下のうち、主人公が思ったことはどれか?四つの中から選べ”とかであることも少なくないのだ。
つまり、適当にやっても25%の確率で当たるはずなのに、それも見事に全外ししているのである。ある意味才能ではなかろうか。
「算数なんてできなくても生きていけるではないか!国語もそうだ、大体漢字読めればセーフ、セーフであろう!?英語に至っては外国に行く予定がないから覚える必要なんぞまったくないわ!」
「そのあたりは日常生活に必要不可欠なトップ3だと思うんだけどなー?……お前、家庭科も死んでただろ。調理実習で卵焼き作ろうとしてフライパンを爆発させる奴は初めて見たぞ」
とりあえず、はっきりわかったこと。
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