<2・変人。>

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 ***  完全に、転校初日から色物で、おさわり禁止物件でしかない少女だと思っていたのだが。  意外にも、織田信花は謎の設定と喋り口調以外はごくごく普通の、快活で元気な少女だった。運動神経抜群で、言動はユーモラス。友達付き合いもいいし、気遣いも上手くて親切ときている。おまけにとびきりの美少女。  男女問わず人気者になるのは必然だったのだろう。 「信花信花。あのさあ、ボール投げる時のコツどうやってんの?俺も頑張って投げんだけど、全然威力もスピードも出なくてさあ」 「そうそう、ドッジボールで敵にぶつけようとしても、思ったほど強く打てなくてあっさりキャッチされちゃうんだけど」 「ふむ、見たところ二人とも体格も悪くないし、投げ方も悪くない。恐らく、腕の力だけで投げようとしているところに原因があるのだろう。投擲は、下半身の力が大事なのだ。特にドッジボールは、時間制限もなく、じっくり溜めて投げることも可能であるはず。腰を落として、しっかり足を踏ん張って投げると良いぞ」 「な、なるほど!」 「あと、ドッジボールは個人競技ではないことを忘れてはならん。一発一発の威力を強めるより、仲間との連携で波状攻撃を仕掛けた方が遥かに有効だ。外野の者と連携して、連中をコートの隅に追い込み、そして一網打尽にするのが良いぞ!」  昼休みに、信花は運動神経抜群な少年少女たちとドッジボールをやったらしい。  戻ってきたらもう、こんな調子だった。よほど活躍したと見える。あまり運動神経が良くない蘭磨としては、ちょっと面白くない。 ――もうクラスの半分以上と友達になってるだろ、こいつ。凄いスキルですこと。  友達がいないわけじゃない。  しかし、積極的に人と関わるのがあまり得意ではない蘭磨としては、彼女のような人間は新鮮であり、同時に少し苦手でもあった。
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