<16・敵陣。>

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 蘭磨はまじまじとエリオットの顔を見た。金髪のボブヘアーが実に可愛らしい、白人の少年。それこそ絵画の世界から抜け出してきたかのような美少年である。アメリカ人とかイギリス人とかフランス人とかそのへんなのだろうか。しかし。 「……戦国武将とかお姫様とかの転生が、外国人になるなんてことあるのか?」  それは疑問だった。  てっきり、星の宝玉はこの日本に、戦国武将らの生まれ変わりを集めているとばかり思っていたからだ。そして、玉を巡って争わせようとしているのではないか、と。 「多分ですけど、星の宝玉……もしくはわたくし達の上位存在が転生者の器を選ぶには、いくつか条件があるのですわ」  しのぶが救急箱から絆創膏を取り出しながら言った。 「あの時代、最前戦で戦う者達の多くが付喪神や妖怪、神仙の力を借りることができておりました。裏を返せば、契約を結ぶに値する存在、それを使いこなせる技量があることが前提だったわけです。ある程度の霊力と大きな肉体的な器を持つ者でなければ、力を使いこなすことができませんもの。ならば、転生先の器もそのようなものを選ぶ、と思いません?」 「外国人に適正があれば、その者達に転生させる可能性もあるわけか?よくわからんけど」 「まあ、大体そんなかんじでしょう。日本人である方が都合が良いでしょうから、日本人の割合は増えるでしょうが……でも、ゼロではないことは元々わかっていますわ。以前わたくしを襲撃してきた者の中に、アフリカ系の方もいらっしゃいましたから」 「マジか」  まあいずれにせよ、何らかの意思が働いて最終的にはみんな日本に集結することにでもなるのだろう。  もしその目的本当に、星の宝玉を巡って争わせることであるならば。それを誘導している上位存在は、何がしたいというのか。選ばれた者だけに宝玉を与えたいのか、宝玉の力を高めるために血を流させたいのか。あるいはよくあるデスゲーム系のラノベで金持ちが道楽で人を集めるように、転生者たちが争うのを見て楽しみたいだけなのか。 ――最後の理由だったら、マジ最悪だな。  まあどんな理由にせよ、その上位存在とやらをぶん殴る権利が自分達にはあるだろう。そう考えると、自分達と敵対している影の鳥の転生者たちも気の毒だとしか言いようがない。 「つか、狭間の世界を作る方法と抜ける方法は、特訓より前に教えておいてほしかったんですが?」  僕がジト目になって睨むと、しのぶと信花は露骨に目線を逸らした。この様子、もしや。 「お前ら素で忘れてた?忘れてたの、ねえ?」 「……ソンナコトハ」 「ナイノジャ、ウン、ナイノジャヨー」 「完全に片言になってるじゃねーか!」  おかしい。自分、本来ツッコミキャラのはずじゃないというのに。この二人に関わってから、ひたすらツッコミを繰り返す羽目になっている気しかない。おかしい。そもそもなんて奴らはこうもボケっ倒しを繰り返してくれるのか。 「俺本当に困ったんだからな?このまま閉じ込められてエリオットと心中する羽目になるかとちょっとマジで思ったんだからな!?反省して!!助けにきてくれたことには感謝してるけども!!」  とりあえず早口で言うべきことは言うことにした蘭磨である。残念ながら当面、この二人の性格は治りそうになかったけれど。
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