<17・狭間。>

4/4
前へ
/93ページ
次へ
「じゃあ質問。その一、別の人間を一緒に狭間の世界に引っ張り込むには?その二、狭間の世界を作った人間が解除できなくなったら?その三、他の人が作ってる狭間の空間に入るには?」 「ふむ、一つ一つ答えようぞ」  まずは一つ目、と信花が指を一本立てる。 「他の人間を引っ張り込むのも難しくはない。さっき、蘭磨は狭間の空間を構築して自分で入ったじゃろ?その入る時、自分の傍にある第三者のことを考え、そいつを共に引っ張り込むイメージを保ちつつ境界を潜るのじゃ。それだけでいい。ただし、共に引っ張り込める人間はある程度傍にいる者のみ。具体的な距離はわかっとらんが、50メートルくらい離れるとうまくいかんということはわかっとる」  50メートルというのはわかりやすい。自分達が短距離走で走る、最も一般的な距離だからだ。蘭磨は心の中でメモを取る。 「狭間の世界を解除するには今のように手を叩くだけでいい。それにより、既に引っ張り込まれている他の者も解放されよう。また、狭間の世界を作った人間が死ぬと、狭間の空間も強制解除となるようじゃ」  ただ、と彼女は二本目の指を立てる。 「問題は二つ目じゃの。狭間の世界を作った人間が意識を失う、手が欠損するなどして叩けなくなった場合。実は、他の引っ張り込まれた者はそのまま狭間の空間から出られなくなってしまうのじゃ」 「げ」 「ゆえに、そなたが儂らにヘルプを求めた判断は正解よ。人が作った狭間の空間にアクセスすること自体は可能。あとは、狭間に入れる別の人間が表の世界のその場所へ行き、空間をひっぺがしてそなたとライオットを掴んで引っ張り出せばいい。……つまり、二つ目のケースは、外部から助けてくれる人の援助が期待できる場合のみ、外に出られるようになるということじゃな」  その言葉で合点がいった。何故特訓を狭間の空間ですべてやらないのか。  事故が起きた時、全員狭間の空間に入っていてしまうと、最悪全員が閉じ込められる可能性があるからだと。 「で、三つ目はこれでわかったじゃろ」  三本目の指を立てる信花。 「人様が作った狭間の空間に入るのは難しくない。自分の空間を作った時のようにその場所で空間を剥がして中に入ればいいだけじゃからの。ただ、入ったら最後、術者を倒すか本人に解除させない限り出られない、というのが大きなデメリットであるわけじゃが……」
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加