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「俺も、お前はかっこいいと思う。……これは、本当だから。その、いろいろ……ありがと」
「うむ!儂も、おぬしにとっても感謝しておるでな!」
手を握られ、ぶんぶんと振られる。まったく調子が狂うったらない。本来告白というのは、もっとロマンチックなものではないのか。
「お二人さんお二人さん、そろそろ元の世界に戻ってきてくださいねー」
やがて、ニコニコしながらしのぶが割って入ってきた。
「茅の外にされて存在忘れられてー寂しくなんかありませんよ?ええ、ありませんとも」
「ど、どわ!し、しのぶ、さん。すみませ……」
「う、うむ!忘れておったわけではないぞ、本当だぞ!」
「へいへいそーですかあ。まあよかったです。このままいくとわたくし、嫉妬でちょっとした呪詛を始めてしまいそうでしたものー」
「ちょっとした呪詛ってなに!?」
ああやばい、またツッコミを入れてしまった。頭を抱える蘭磨。この癖は直したい。でないとこのまま一生、この二人のツッコミ専任過労死ポジションに落ち着いてしまう気がする!
「と、とりあえず、敵がいるってこともはっきしりたし、今日この後からでも特訓でいいよな、特訓!」
蘭磨は誤魔化すように声を張り上げた。
「俺も、いろいろ試したいことがあるし……」
と、そこまで喋った時だった。小さなうめき声が聞こえてくる。あ、と蘭磨は小さく声を上げた。もう一人、この場にいたことがすっかりすっぽ抜けていたのである。ソファーで眠ったままの、エリオット・スター。洗脳されて疲弊しきっているだろうし、暫く寝かせておいてあげようと言い出したのは蘭磨の方だったというのに。
「う、うん……?あ、あれ?」
「……悪い、エリオット。お前寝てるのすっかり忘れてた。起こしてすまん」
「え?……え?」
目を開いたエリオットは暫く天井をぼんやり見つめ、やがて蘭磨の声を聴いてがばりとソファーから上半身を起こした。
「こ、ここ、ここは!?て、ていうか私は、え、ええええ!?」
「ようやく起きたか、寝坊助め」
ふんす、と信花が鼻を鳴らす。顔がちょっと赤いように見えるのは気のせいだろうか。
「そなたが起きてくれないせいで情報が集められなくて困っておったのじゃ。うっかり洗脳されたおぬしにもちょっとは責任があるであろう、お濃よ。ほれとっとと、情報を儂らに話すのじゃ。ほれ、ほれほれ」
「え、あ……ま、まさか……」
エリオットは蘭磨を見、しのぶを見、信花を見て――くしゃり、と顔を歪めた。そして。
「あ、あああああ……!思い出した、全部……!の、信長様、信長様ですよね?本当に……本当に申し訳ありませんでした!」
全員、暫し硬直することになったのだった。
その場で今度は、エリオットが声を上げて泣きだしてしまったのだから。
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