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友達なんて、ごくわずかでいい。
多くなればなるほど、抱えておけずに取りこぼしてしまいそうで怖いのだ。
己が変なところでお節介なタイプであることを蘭磨は自覚していた。大切な人が増えれば、自分は確実に一人一人に余計な世話を焼いて、かえって迷惑をかけてしまうことだろう。そして結局、好きになった人に嫌われる。自分にとっても相手にとってもいいことなんて一つもない。
たくさんの友達に囲まれる信花は羨ましいとは思うけれど、自分は絶対に彼女にはなれないし、なってもいけないとわかっていた。だってそうだろう。
人一人が、抱えておける数なんて限界がある。
無理やり手を伸ばして誰も彼も救おうとしたら、結局自分の腕がちぎれてしまうだけなのだから。
――多分、そういうのわかってないんだろうな。幼稚園の時に覚醒したって言うなら、幼稚園の時にはもうそうなんだろうし。
嫌なことを思い出しそうになって、首を横に振った。
ああ、自分の悪い癖だ。時々――本当に時々、昔のやらかしをつい昨日のことのように思い出して自己嫌悪に陥ってしまうのだから。
「ねえ信花ちゃん。信花ちゃんって塾とかなんもないって言ってたよね?」
放課後。女子の一部が、信花に声をかけていた。あの手のタイプは女子にもそうそう嫌われないからお得である。謎の侍口調も、彼女のキャラとして受け入れられつつあるようだ。まあ、小学生だから謎の人格ぶりたい気持ちも理解できるのだろうか。
「だったら、うちに遊びに来ない?まっちゃん達も来るんだけど……」
「ああ、すまぬな、日高殿。今日はどうしても、一緒に帰りたい奴がいるのだ」
「え」
信花の目は、明らかにこっちを見ていた。まさか、と思うのと、彼女がにんまり笑うのは同時で。
「のう、蘭磨。おぬしも儂に、いろいろ訊きたいことがあるはずだろう?せっかくだ、帰りがてら教えてやるとも」
「う……」
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