<19・浅井。>

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「それで、同盟の証として織田家から浅井家に嫁いできたのがお市の方ですわね。天下絶世の美女、だったとか。羨ましいですわ。まあわたくしに言わせれば、帰蝶様もお市の方に負けず劣らず美しい方でしたけど」 「あ、ありがとうございます……なんか照れちゃいますね」  エリオットが頬を染めて言う。こうして話をしていると、段々前世と現在がごっちゃになってくるなあ、と蘭磨は思う。前世の意識が強い者は、やっぱり前世の自分を褒められて嬉しいということなのだろうか。  ちなみに、浅井長政はこの名前が有名だが、六角氏に賢政の名前を返上した当時は新九郎と言う名前だったという(こちらは元々の名前だったので、戻したとも言う)。長政が長政と言う名前に解明したのは、勢力をつけてきた織田信長にあやかって一文字貰ったからという説もあるが、このへんの真偽は不明だ。  織田信長はかつて、同盟関係になった浅井長政を大層気に入っていたそうな。まあ気に入っていたからこそ、絶世の美女と名高い妹を嫁がせたとも言えなくはない(他にいくらでも嫁の貰い手はあっただろうし)。  残念ながら、織田信長と浅井長政の蜜月関係はある時を境に途絶えることになるわけだが。 「織田信長の方についたけど、浅井家と朝倉家の関係はゼロにはなっていなかった。まあ、親の代から親交もあったしな。だから信長との同盟の際にも、朝倉家とは喧嘩しないよーって約束してたんだっけか」  そう、契約はしていたはず、だったのだが。 「いろいろあって織田信長が朝倉家にぷっつんしちゃて、朝倉家討伐のための挙兵をしちゃうんだっけ?……ここの理由が実は史実と実際違うんじゃないかなあと俺は睨んでるんだけど」 「その通りじゃ。細かい流れは省略するが、この頃朝倉家の様子がおかしくなっておったのだ。ようは、朝倉の領地で奇妙な事件が多発しておった。恐らく、この時朝倉家は星の宝玉を手にしていた、あるいはそのなんらかの影響下にあった可能性が高い」 「あー」 「星の宝玉絡みとあっては、儂らとしても調べぬわけにはいかんからのう。で、調べていたら、領地に調査に入った儂の家臣どもが次々行方不明になったり、中には猟奇的死体となって発見された。で、それに関して朝倉家に問い合わせても無視一択よ。そりゃ儂も怒るというものじゃ」  理由は違えど、挙兵自体は事実であったらしい。  その結果、浅井家は恩ある朝倉家と同盟関係にある織田家の間で板挟みになってしまうわけである。結局家臣たちの働きかけもあって長政は朝倉家の方につくことに。これは、織田家が浅井家にもうちにつけ!と同盟の時の約束をスルーして頼んでしまったのも原因なわけだが。
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