<19・浅井。>

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 で、最終的に織田と浅井は敵対関係となり、姉川の戦いが起きるわけである。ちなみにこの時、織田家の味方にはあの徳川もついていたのは有名な話だ。浅井家も善戦したが結局敗北。  この後の流れは大幅に省略するが、両家の溝は決定的なものとなり、最終的には浅井の本拠地・小谷城が織田の軍勢に囲まれて追い込まれることに。信長は羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)らを送り込んで降伏を勧告するも、長政はこれを完全に拒否。父の久政と共に浅井長政は自害。享年二十九歳だったという。 「戦いになった理由や時期、敵味方が若干違った面もあるが……おおよその流れは史実と相違ないのう。儂が、長政を追い詰めて死なせたのは間違いない」  はあ、と信花はため息をついた。 「そりゃあ、恨みつらみがあってもおかしくはないが……しかし……」 「何か引っかかるのか?」 「まあ、のう。……浅井家との対立は、宝玉の力で暴走しているであろう朝倉に浅井家が味方してしまったから、というのが大きい。そして、浅井家は最後まで宝玉の存在を信じていなかったように思うのじゃ。戦国の有名な武将であってもそういう者はちらほらおる。今でいうところのオカルトの産物であるからの。儂だって、実際に星の宝玉の威力を見ていなければ、今でも信じていなかったかもしれない」  死ぬまで長政は、宝玉のことを信じていなかったし、詳しくなかった可能性がある。  とすると。 「……転生してきてから、長政にいろいろ吹き込んだ奴がいるかもしれないってか?」  蘭磨の言葉に、それはあると思います、とエリオットが続けた。 「私と対峙したのは、長政様とお市の方様だけ。実際は、お市の方様の術にのみやられてしまったってかんじでした。正直ほとんど不意打ちでしたし、私は戦いたくなかったですしね。で、その方々の会話で、気になるものがあったんです。長政様は、こう言ってました」 『冷酷無慈悲な織田信長にだけは、星の宝玉は渡してはならない。あれは、真に相応しい者が持つべきだ。……あの方のような、な』 「浅井長政ほどの人物が、あの方、と呼ぶほどの人間。恐らく、別の誰かから命令を受けている、のだと思います。それが誰なのかまではわかりませんでしたが」 「うおう……なんかものすごい大物が出てきそうな嫌な予感がするのーう……」 「右に同じ」  それこそ、信長と敵対したことがある武将とは限らないかもしれない。実際、現時点でいろいろ理由つけて蘭磨たちが戦ったのが織田方の人間ばかりだという残念な状態になっているわけだし。  騙されて、あるいは洗脳されて、なんらかの目的があって――などなどの理由で、史実では織田についていた者達がこちらに向かってくる可能性も十分あるわけだ。
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