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何より、自分達が戦う相手は戦国武将そのものではなく、令和に蘇ったその転生者たちなのである。現在の彼らの考えも大きく影響するのは言うまでもない事実だろう。
「長政の力は未知数ですが……少なくとも、お市の方は洗脳の力を持っているわけですよね?」
そして、しのぶがあっさりと宣う。
「そっちだけでもさっさとボコっておかないとまずくありません?他にも洗脳されて、操り人形にされている人もいるかもしれませんし。ほっとくと次々と面倒くさい刺客がくる予感しかしませんわ」
「言ってることは間違ってないけど言い方!あんたお嬢様だろ、なんでそんなにアグレッシブなの?説得とかそういう選択肢ないの?」
「やですよ面倒くさい。穏便に簡潔に暴力で解決しましょうよ暴力で」
「穏便の文字をいっぺん辞書で引き直してこい!」
ああいけない、またツッコミしてしまった。頼むから謎のボケ倒し攻勢やめてくれ、と頭を抱える蘭磨である。
「多分ですけど、浅井長政様もかなりの力を持っていると思います。危険ですけど、乗り込んでいくというのは選択肢の一つとしてアリだと私も思います」
しのぶの言葉にしれっと賛成してくるエリオット。
「浅井長政様は、私達より年下……小学校低学年くらいの男の子に見えました。現在の名前は、浅井凛空だと言っていたと思います。もう一人のお市の方様は、現在の名を市原律子というのだと」
「現在の名前、名乗ったんか……」
本来、自ら相手に情報を晒す意味はない。本名を知られれば、それだけで相手のことを突きとめる手がかりとなるからだ。特に浅井凛空の方は下の名前が少し変わっているし、ネットで検索するだけでも何か引っかかってくる可能性があるだろう。
そして、彼等もエリオットの洗脳が解ける可能性と、そのままこちら側の味方につく可能性は織り込み済みのはず。なんせエリオットは“帰蝶”であり、信長に敵対する理由など本来ないのだから。
それなのに名前を伝えてきた、ということは。
「どうせ伝えても調べられないとタカをくくってるか、もしくは……誘ってるかの、どっちかだろうなあ」
いずれにせよ、連中の元に乗り込む前に丁寧に準備をする必要がありそうだ。
それこそ彼等の仲間が大挙してアジトで待ち構えている、なんて可能性も十分に考えられるのだから。
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