<20・無茶。>

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<20・無茶。>

 浅井凛空と市原律子。  彼等に関して調べることは難しくなかった。というのも。 ――まさか、天才子役とその伯母とはなあ。  走りながら蘭磨は思考を巡らせる。エリオットの襲来から三日後。今日も今日とて、蘭磨はしのぶの家で特訓しているところであった。今日はエリオットもこちらに来ていて特訓に参加してくれている。この四人で共に長政&お市コンビに戦いを挑むのならば、今後は連携も練習しておいた方がいいと考えてのことだ。  浅井凛空は現在テレビ、ネットで話題となっている売れっ子の子役だった。五歳で大河ドラマの端役としてデビューすると、そのかわいらしさと演技力で一躍有名となり、そのあとは朝ドラで主人公の幼馴染の幼少期を演じてさらに名を上げることとなる。  九歳の現在は、月九ドラマでヒロインの息子役を演じている。死んだ夫が乗り移った少年という難しい役柄ながら、見事に“憑依されている大人モード”と“憑依されていない子供モード”を使い分け、ネットでもまさに絶賛されている真っ最中だった。  ハーフでなかなか可愛らしい顔立ちというのも大きいだろう。大人になったら間違いなくイケメンになる顔である。女性を中心に人気を博す反面、一部の若年層からはかなり反感を買っている様子だったが。 ――で、その凛空は現在、伯母の律子に引き取られている、と。  複雑な事情があるのは明白である。噂によると、律子の妹であり凛空の本当の母親は男癖の悪い上放浪癖があり、きちんと子育てする様子がなかったので児童相談所が入って親権を剥奪されたとかなんとか。今は四十九歳の伯母の律子が彼を育てつつ、マネージャーの役目もこなしているということのようだ。  調べれば彼らのスケジュールもある程度把握できるし、なんなら特定のキーワードを混ぜこんだ上でメールを送ってもいいだろう。織田信長一派を消したいのはあちらも同じはず。ならば会いたいと言えば、向こうだって素直に応じてくる可能性が高いと思われる。  まあどう転んでも、罠を仕掛けてこないはずがないのだが。 ――住んでいる住所とかももうちょっと調べれば割れそうだし……しのぶの家の人も優秀そうだし。ていうか、エリオットのクダギツネが便利すぎるからなあ。……問題は。罠を用意していても乗り越えられるくらいの実力を身に着けるべき、ってところだが。  ちり、と首筋に殺気を感じた。蘭磨は一気に加速する。すぐ後ろで破裂するような音が響いた。エリオットの“紫電一閃”が着弾した音である。  現在蘭磨は、信花と共に訓練場を走り回っているところである。室内はスモークによって満たされ、視界が非常に悪くなっている。その中から時折しのぶとエリオットが攻撃を飛ばしてくるので、その攻撃をかわしつつ彼等を倒すというのが今日の訓練内容だった。
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