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ちなみにこちらは頭にライトを装着していることもあり、向こうからは位置が最初からバレている状態である。一か所に止まると狙い撃ちされるので、基本は動き続けて相手の攻撃を見極めなければいけない。今までやっていた“ランニングしながらしのぶの攻撃をひたすら避ける”より、一段も二段も上の訓練内容だった。
――けど、これがクリアできなきゃ……凛空と律子のコンビに勝つことなんてできない。
再び飛んできた疾風をのけぞって躱しつつ、蘭磨は考える。
――それから。……洗脳されてる人がいるかもしれないこと。できれば人を殺さないことを貫くなら……殺さずに相手を仕留めることができる俺の“浄化”の力はかなり有効。使いこなせるようになるべきだ。
エリオットとの闘いではっきりした。
自分は敵に致命的なダメージを与えず、かつ洗脳の術だけ打ち砕くことができる。洗脳した兵隊を従えて攻撃してくる可能性、味方が再び洗脳される可能性を考えるならば、この能力はしっかり扱えるようになっておくべきだろう。
それに、この力は洗脳されていない人間の動きを止めることにも使えるはずだ。どのような技を使うにせよ、術を使う時には霊力が集中するポイントができる。体を動かす時、そこにエネルギーが集約されるのと同じ。そのポイントを見極めて貫けば、敵の技を封じたり、行動を制限することも理論上可能であるはずなのだ。
「!」
直感。
振り向いた直後、何本もの黒い羽がこちらへ飛んできた。いつの間にかしのぶが後ろに回ってきていたらしい。“黒ノ烈風”。コノハテングの黒い翼をこちらに向けて波状攻撃してくる技だ。
本来、しのぶはコノハテングの力を使って空に舞い上がることもできるという。しかし、コノハテングの羽根は羽ばたく時にそれなりの音がする。せっかくスモークで視界を遮っているのに、羽音で位置がわかってしまっては意味がない。ゆえに、最初から空からの強襲はないだろうと思っていた。
案の定、霧に紛れて後ろから攻撃してきたわけだが。
――その攻撃は、エリオットの“紫電一閃”と同じ!いくつもの“攻撃”を飛ばしてくるその中心部に、隙がある!
攻撃を見極め、真正面から蘭磨は飛び込んだ。黒い翼があちこち首を、腕を、足を掠め痛みを伴う。が、ここで足を止めてはいけない。多少傷を負っても骨が折れても、自分が真っ先に突っ込んで敵の動きを止めてしまえばいくらでも信花が攻撃を仕掛けることができるのだから。
「なっ」
息がかかるほど近くに行けば、霧がかかっていても関係ない。蘭磨は顕現させた不動行光を、しのぶの背中に回した。技の中心、力が集約される場所は人とその技によって異なる。しのぶの場合は、その翼の付け根だとわかっていた。
「貰った!“藍蘭浄罪”!」
手首を回すように、黒い翼を切り裂いた。途端、しのぶの全身から力が抜け、崩れ落ちることになる。
「信花、こっちだ!しのぶさんは止めたぞ!」
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