<2・変人。>

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 それはまあ、間違いない。  彼女が言う“前世がどうたら”というのは全く信じてはいないが、それはそれとして何でそのような設定を持ってきたのかは気になっていたのは確かだ。  ましてや、織田信長は歴史上の登場人物の中でもあまりに有名である。歴史オタクでなくてもこの名前を知らない日本人は少ないだろう。  その強さ、横暴さから畏怖とともに第六天魔王なんて呼ばれていたという話もあるほど。  正直言って――今尚彼の名前は、敬愛と侮蔑の双方で語られることが多いはずだ。彼の力は認めるけれどやったことは許せない、と言う声もちらほら聴く。実際、お寺を焼き払うようなこともしたようだし、神も仏も怖くない罰当たりな男という印象を持つ者も少なくないだろう。  まあようするに。ファッションで名乗るには、織田信長の名前は軽くないはずなのである。確かに彼女の名前的に、織田信長に影響されて娘にそんな名前つけちゃった感はあるが。 「……あんまり、はしゃぐなよ」  知りたいこと、気になることは確かにある。蘭磨は渋々頷いたのだった。 「言っておくけど俺は、お前の前世云々の話なんか、まったく信じてないんだからな?」 「無論、それで良い」  うんうんうん、とどこか嬉しそうに頷く信花。実質、今日のところ蘭磨は信花に優しくした覚えが一切ない。迷惑がったり、冷たくしたりといったことばかりなのに、なんで彼女はそんなにニコニコしているのだろう。  まるで本当に、運命の恋人に再会したようではないか。 「すぐに理解できるとは思っておらん。まあ、いずれ嫌でも事実を思い知ることになるとは考えているがの」 「どういうことだよ」 「何、その時が来ればわかる。必ずな」  その時が来れば、とか言って重要な情報を先延ばしにするキャラというものは、アニメでも漫画でもちょいちょい見かけるものだ。  そういうのあんまり好きじゃないんですけど、と蘭磨はやや腐りたくなったのだった。
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