<21・呪詛。>

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 ***  その日。  蘭磨は訓練を続けたがったが、信花がそれを拒否した。もっといえば、しのぶとエリオットもだ。明らかに、蘭磨の様子がおかしい。エリオットと戦ってから、一体何着服を駄目にしていると思っているのだろう。  死ななければいい、なんて問題ではない。  彼が怪我をするだけで辛いというのが、そんな当たり前のことがどうして彼はわかってくれないのか。信花としては疑問で仕方ない。好きだ、というのは既にちゃんと伝えていることだというのに。 ――儂の言葉の伝え方が不器用なのやもしれぬ。本来ならば、本人を説得してちゃんと訊きだすべきなのやもしれぬ。でも、儂はとにかく少しでも早く、あやつのことが知りたくてたまらんのだ。  善は急げ。それが信花のモットーだった。  というわけでしのぶの家で早々に訓練を繰り上げたその日、そのまま学校に戻ったのである。今日は、同じクラスの男子たち数人、特に轍が所属するサッカークラブの練習があることを知っていたからだ。この時間ならば彼らが学校から帰る前に話が訊けると思ったのである。  案の定。練習を終えて部室から出てきた轍を信花は待ち伏せすることに成功していた。  さすがに轍に織田信長やら森蘭丸やら覚醒者やら、のことは伝えられない。なので、“最近彼が喧嘩の特訓もするようになって、それでより生傷が耐えなくなって心配だ、自分を大事にしていないように見える”という体で話を持っていったのである。同時に、信花がストレートに蘭磨に想いを伝えたということも(あちらさんからなんだかんだ答えは聞けていないが)。 「あ、あー……」  轍ならば何かを知っているかもしれない、というのは正しかったようだ。  突然待ち伏せした信花に嫌な顔をすることもなく、されど明らかに困った様子で轍は明後日の方を向いたのだった。そして。 「……悪い、お前ら。今日先に帰ってくんね」 「お、おう。でも、いいのか?その……」 「いい。こいつ多分、ちゃんと話さないと帰ってくんねータイプよ」 「なら……」  友人達に頼んで、先に学校を出て貰った。この様子だと、轍以外の男子たちにもちらほら事情を知っている者がいそうである。  校庭の隅にあるベンチに信花を誘導すると、轍はしばし頭を抱えた末、信花に訊いたのである。 「えっと、確認なんだけど。……蘭磨から、マジで何も聴いてねえのな?」 「訊いてない。その様子だと、なかなか有名な事件でもあったのか?」 「有名っていうか、うちの学校の……特に六年の間じゃタブーみたいになってる話があんの。俺も全部知ってるわけじゃねえよ?当時、蘭磨と同じクラスじゃなかったし」
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