<21・呪詛。>

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 蘭磨よりずっと長身で筋肉質な体型の少年が座ると、二人掛けのベンチも随分小さく見える。信花も長身の方だが、轍は輪をかけてでかい。中学二年生です、とか言われても十分通りそうな見た目をしているのは確かだ。  そういえば蘭磨から聴いたことがあるが、この少年スポーツに関してはなかなかのセンスを持っていると聞く。特に、サッカーの才能は目覚ましいものがあるという。基本はストライカー向きだが、その気になればリベロやゴールキーパーまでオールラウンダーにこなせるそうだ。  それに対して、蘭磨とは違いあまり学校の勉強は得意ではないとか。いつもニコニコ笑っていて、シンプルな解決方法を好む猪突猛進タイプという印象。蘭磨とはまるで真逆。だからこそ気が合うのかもしれない。 「これは。一年生の時蘭磨と同じクラスだったやつが言ってたんだけどな。あいつ、昔はあんなに大人しくなかったらしいんだよ。今はどっちかというと、真面目でクールな優等生だけど……昔は毎日のように悪戯もしたし、友達と遊びまわって先生とか親に叱られることも多かったんだってさ。うっかりボール遊びしてて廊下の窓硝子割って叱られるとかもしれてたみたいだし。どっちかというと、俺や信花に近い性格だった、って」  でも、と轍の表情が曇る。 「二年生の時にさ、事件があったんだよな。“魔の二年四組”事件が」 「魔の、二年四組?」 「そ。教室の構成の都合っていうか……。一組二組三組は二階の教室だったのが、二年四組だけ三階の、離れた教室にぽつーんってかんじで、行き来がちょっと不便になってた。二階って三年生や四年生の教室もあるんだけど、それらの教室の間に理科室があったこともあってやっぱり陸の孤島っていうか?だからだろうな。……二年四組の様子は、他のクラスの奴らの目には留まりにくかった。俺も、事件が起きて初めて状況を知ったくらいだし」  轍によると。  かつて、二年四組を支配していた一人の少女がいたという。  彼女の性質は、一言で言うとサイコパスそのものだった。こっそり友達の給食に下剤を混ぜて苦しむところを観察したり、上履きに画鋲を入れるくらいは朝飯前。ただやり方が周到で賢かったため、彼女がやっていると皆が知るまでには時間がかかったという。  同時に、妙なカリスマ性があった。一部の友人達を取り込み、自分の信者のように付き従えていた。恐らく、彼女にとってはいじめをしているつもりはなく、“ちょっと面白そうだから人が苦しむところを観察してみたい、よって人を使って理科の実験をしている”くらいの感覚だったのだろう、とのこと。彼女の誘導尋問、蔓延させたクラスメートの悪い噂、人に大きな怪我を負わせかねないような悪戯の数々。とても見過ごすことなどできないと、真向から歯向かった少年がいた。それが、蘭磨だったという。
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