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<22・覚悟。>
自己犠牲なんて謳うつもりはない。
ただ蘭磨ははっきりと理解しただけだ。自分はどこまでも傲慢だった、と。
友達になれば、笑っている時間があれば、それで視界に入る全員を助けられていると思い込んでいたのだ。実際はそんな簡単なことではなかったというのに。
『一緒に頑張ろう!あんな奴らに負けるなんて、悔しいしな!正々堂々戦ってれば、いつか絶対自分達が正しいって、証明されるはずなんだし!』
当たり前に、そんなことを口にした。
気づいていなかったのだ。そうやって正しさを口にすることが、かえって誰かを追い詰めることもあるということを。団結、絆、結託。それはけして悪いことではない。ただ、時に人から弱音を吐くことや、逃げ道を奪ってしまうこともある。幼かった自分は、そんな単純なこともわかっていなかったのだ。
みんなで頑張ろう、自分達は絶対悪い奴には負けない、屈しない。――そんなことを言っている集団の中で、一体誰が“学校を休みたい”“戦うのが怖い”と言えるだろうか。
集団を作り上げたのは、間違いなく蘭磨だった。そしてあの時の蘭磨は、自分の“友達”全員に目が届いている気になっていたのだ。本当は心折れそうになっている人間、一秒でも早くこの争いを終わらせてほしいと願っている人間がいることに気付かずに。
『わたし、あの子も怖かったけど、本当は蘭磨くんのことも怖かった。だって、蘭磨くんは強いから、どこまでも頑張れちゃうから。わたしは全然頑張れないのに、学校休みたい、とか言えなくて。梨衣くんもそうだって言ってて。だから、由真ちゃんに相談したの』
あの日、屋上から飛び降りた人間は三人。
女の子の斎藤江湖
男の子の大海梨衣。
それから――唯一犠牲者となった、赤井由真。
由真は面倒見の良い少女だった。多分、蘭磨よりずっと周りが見えていたということなのだろう。“女王様”へ対応するのに疲れて、逃げたいのに逃げられなかった江湖と梨衣に最大の逃げ道を用意してしまった。それが思いついてしまったのだ、彼女は。
『由真ちゃんね、言ったの。あの子は頭が良くて、怖いから。一度目をつけられたら簡単逃げられない。あの性格は一生治らないし、戦ったって意味なんかないって。だったら……あの子のせいで、自殺した子がいっぱい出たら、学校もきっと黙ってられないだろうって。わたし、もうそれでいいって思っちゃった。死んだら、逃げられるし、それで学校が止めてくれるならみんなのためにもなるでしょ?女王様を、追い出してくれるかもしれないでしょ?』
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