<22・覚悟。>

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『何言ってるんだよ。それで追い出してくれたって、お前らが死んだら意味ないじゃんか……!生きてれば、いいこともあるかもしれないのに』 『いいこと?それはいつ来るの?明日?明後日?一年後、二年後?……わたし、そんなに頑張れない!わたしも梨衣くんも由真ちゃんも無理だった、蘭磨くんには弱い子の気持ちなんてわかんないんだよ!!』  あの日。  病院のベッドの上で、江湖はそう言って泣いた。きっと何もかもボロボロだったのだろう。結局彼女は死にきれずに生き残ってしまった。しかも、腰から下がほとんど動かない、排泄もままならないという、最悪の後遺症付きで。  弱い彼女に寄り添ってくれた由真は死に、梨衣は意識が戻らないまま入院を続けている。彼女の弱さを理解してくれる人はもう誰もいなかった。  そして、怒りをお見舞いにきた蘭磨にぶつけたのだ。――蘭磨が持ってきた花を叩き落としながら。 『もうやだ、やだ、やだ!こんなのやだ、あんなに痛かったのに、なんで死ねないの?これでもまだ頑張れとか学校行けっていうの?きらいきらきらい、蘭磨くんなんか、だいっきらい!!』  自分のくだらない正義感が、人を苦しめた。人に犠牲を強いたのだ。  由真は強い少女だった。多分彼女は逃げたかったわけじゃない。ただ本当に江湖と梨衣に寄り添って、自分なりの逃げ道を用意して提示したのだろう。それが、江湖にとって唯一の救いだったのだろう。――どれほどその結果が間違ったものだったとしても、その心が間違っているなどとどうして言える?恐らく由真本人は本気で、自殺によっていじめを止められると思っていただろうことは想像に難くないというのに。それがみんなのためだと信じて、間違っているなりに具体策を示したというのに。 ――結局、学校側は自殺といじめの因果関係を認めなかった。  正確には調査は入ったが、それより前にさっさと女王様が引っ越してしまったのでそれで解決したことにされてしまったのだ。彼女に付き従っていじめに加担した少女たちは残っているというのに。あの一年で苦しんだ人がたくさんいて、今もなお多くの人が心身の後遺症に悩んでいるというのに。 ――俺は、選択を誤った。それだけは紛れもない事実だ。  蘭磨商店街でふと、足を止めていた。そこには昔からある小さな花屋が存在している。江湖が入院していた病院はこの近くであり、自分は彼女のお見舞いにお小遣いで花を買っていったのだ。  そんなもの、何の意味もなかったというのに。 「そうだよな。……花なんて、何の意味もない。正しい心がなければ、何一つ」
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