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「あーそーぶーのーじゃ!いろいろ遊びは考えてきたのでな。そういえば蘭磨は遊戯王カードも好きだったのう、日々デッキは持ち歩いておると言っておったな?今日も勿論持ってきておるな?」
「そりゃ鞄に入ってるけど……って、えええええええええええ!?」
マジで?と蘭磨は口をあんぐり開ける。信花が遊び好き、楽しいことが好きなのは知っていたが、しかし。
「お前、そんなことしてる場合じゃないだろ、今は」
轍たちの手前、詳細は言えない。それでも信花には、蘭磨が言いたいことは十分伝わっているはずだった。
しかし彼女はふふーんと鼻を鳴らしてスルーすると、あっさり言ってのけたのである。
「一度全員で集まって遊びたかったのじゃー。儂ももっともっとみんなと馴染みたいしのう!この家なら大規模鬼ごっこもできるしの!」
「いえええええええええええええええええええええええええい!」
「いええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええい!」
「ひゃっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「え、ええええ……?」
蘭磨は完全に固まるしかない。一体何を考えているのだろう、彼女は。
しかも突っ込む暇もなく、ノリのいいメンバーは雄叫びを上げ始める始末。確かに、元気系の連中は、大勢で遊ぶというのも楽しいし誘われれば乗ってくるのだろうが。
――ど、どういうこっちゃ?
気になるのは、この中には大人しい少年少女も混じっているということである。
いつも一人で本を読んでいるのが好きそうな子や、休み時間も勉強しているような子までいる。信花のことだから、彼等の連絡先も確保はしていたのだろうが、土曜日にわざわざ家に来て遊ぼうと誘ったはずで、当然断ることはできたはずなのである。
何で、彼等まで普通に来ているのだろう。
いや、彼等と遊びたくないわけではなく、彼等が誘いに応じたのが不思議という意味ではあるのだが。
「……僕、ずっと思ってたんだけど」
やがて、目があった眼鏡の少年――蘭磨が“いつも勉強してて誘ってもこないだろうと思っていた”生徒の一人、灰島秀が、そっと四角いものを持って手を挙げた。
黒っぽい掌サイズの箱のようなもの。あれは、もしや。
「幼稚園の時からカード集めてたんだよね。森くんといっかい、デュエルしてみたかった」
「……まじ?」
どう見てもデッキケースですありがとうございました。
蘭磨は目をまんまるにすることになるのだった。
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