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世界で最も売れたカードゲーム、は伊達ではない。
最近は少しルールが簡易化されたラッシュデュエルというのもあるが、現状蘭磨たちがよく遊ぶのは元々あった遊戯王オフィシャルカードゲームの方だった。
「……事前にリサーチするべきだった」
現在、テーブル囲んで蘭磨と秀が対戦中。秀はしょっぱい顔で、テーブルの上のシートを見つめている。
そこには数枚カードが並べられ、まさに勝負が行われているわけだが、その盤面は。
「トリックスターは、DDDと相性悪すぎる……。ダルクで全部効果ダメージ吸収されちゃうし。蘭磨くんがDDD使いだって知らなかったら他のデッキ選んだのに」
「悪いけど、俺ギャラクシーとかも使うし、その時の気分でデッキ変えるからな?ターンエンドでいいか?」
「……ターンエンド」
「はい。俺のターン。ドロー。残念なお知らせだ。ベオウルフの効果で、お前の魔法トラップカードは全部ぶっ壊される。当然、光の護封剣も」
「あああああああああ……」
「つか次元幽閉伏せてんじゃねーか!あ、危なかった……。ダルクとベオウルフでトリックスター・ホーリーエンジェルとブラッディマリーを攻撃。バイバイ」
「ああああああああああ負けたあああああっ!」
秀はその場でテーブルの上に突っ伏した。彼のライフポイントがゼロになり、こちらの勝利が確定したのだ。秀がカードを片付け始めると、他の遊戯王男子・女子も声をかけてくる。
「蘭磨、次は俺とデュエル!」
「ちょっとまって、私もやりたいんですけど!?」
「ねえねえ、蘭磨くん、ラッシュも面白いよーデッキ持ってないのー?」
「つーか俺遊戯王全然わかんねーんだよ誰か解説してくれ!なんで相性悪いとかそう言う話になったんだ?リンクモンスターってなに?なんで攻撃力しかないの?」
「せ、説明そこからか……」
わいのわいのわいの、と少年少女たちが群がってくる。変だなあ、と蘭磨は少し首を傾げた。遊戯王を嗜んでいるクラスメートは結構な人数に登る。今日デッキを持ってきた奴が多いのは多分、信花が持ってこいと言ったからなのだろう。しかし。
――なんでみんな、俺とばっか対戦したがるんだ?
一体、信花はなんといって皆を誘ったのだろう。首を傾げているうちに、目の前に轍が座っていた。にんまりと笑う彼の手元にはデッキケースが。
「次は俺の不知火と戦え!」
「お前とは結構対戦したことあるじゃん!しかもお前ほとんど俺に負けてないか?」
「だからだよ、リベンジだ、リベンジ!」
轍もなんだか妙にご機嫌だ。蘭磨は不思議に思いつつも、再びカードを戻してシャッフルしたのだった。
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