<23・遊戯。>

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 ***  外で遊ぶのが好きな奴も少なくない。それに、遊戯王カードを知らない者も多いので、いつまでもそれだけで遊んでいるわけにはいくまい。  広い敷地でのかくれんぼは、想像以上に盛り上がることになった。六年生にもなって鬼ごっこなんて、と思う子が一人や二人いてもおかしくないと思っていたのに。 「……探すか」  妙に静まり返った庭を、蘭磨はてくてくと歩いていく。ジャンケンに負けて真っ先に鬼になってしまったのだ。信花の家は、庭も日本庭園風になっていた。小さな池には鯉か金魚かわからないものがたくさん泳いでいる。池の周辺を取り囲むように松の木があり、ツツジの植え込みなどもあるので隠れる場所は多そうだった。  普通はこのへんに隠れる奴が多い、と思うのだが。 「……さて」  蘭磨は池を見――くるりと池に背をむけて屋敷を振り返った。自分がそちらを見たとたん、びっくう!と屋根の上に蠢いた影がちらほらと。 「下しか探さねえと思ったな?ばれてんだよ、馬鹿と煙は高いところが好きだからなあ?」 「う、ぐぐぐぐっ」  子供の目線では、どうしても低い場所ばかり探しがち。それを知っている者は、必然的に高い場所隠れたがるものだ。  案の定、屋根の上に登っている少年少女が三人。信花に、信花と仲の良い男子二人である。ちなみにその男子二人は、ちょっと前に屋上に勝手に入り、給水塔の上に登ってえらく叱られていたコンビでもあった。 「何故にばれたし」 「バレるわそりゃ!お前らほんと高いところ好きだよな!……ほれ、見つかったんだからとっとと降りろ。つか、あんま危ないとこ登るな。信花は落ちても死なないだろうが」 「酷い!儂も一応乙女じゃぞ、少しは心配してたもれ!」 「自分で乙女とか言うな!」  排水管を伝ってするする器用に降りてくる信花。そのうち、ジャンプするだけで二階に登れるとか言い出しそうなのが怖い。  何で信花がこんな企画を考えたのか、気になるといえば気になるがとりあえず後回しだ。  遊びが始まった以上、全力でやるのが自分の流儀である。残る生徒をこの敷地の中で全員見つけるのは骨が折れるが、まあ大体皆の性格は把握しているしやってやれないことはないだろう。  とりあえず。 「離れの屋根に乗ってる沢田と茅野(かやの)も見えてるからなー?降りてこい」 「ぎゃ」  上にいる奴を全部引きずり落としてから、庭に隠れてる連中を探そう。  あの浅さなら池に沈もうとする馬鹿はさすがにいないはずである。植え込みには四人くらい隠れていそうだ。あと木の上。 ――……高橋、お前の体型で松の木の後ろに隠れるのは無理があるだろ。  心の中でツッコミを入れながら、蘭磨はそちらへてくてく歩いていったのだった。
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