<24・宴会。>

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<24・宴会。>

「んんんん?」  蘭磨は頬がひきつるのを感じていた。 「一体誰かなあ?……ダイヤの9止めてやがるのは」  かくれんぼの後の七並べ大会。  さすがに全員でやるのは枚数的に現実的ではなかったので、4グループに分かれて行うことになったのだが。  例のごとく、変なところでカードの流れを止めるアホがいる。蘭磨がじーっと周囲を見回すと、全員が露骨に視線を逸らした。これはあれだ、わざと怪しく振る舞い続けることで全部の疑いを逸らそうという流れだ。 「……轍ぅ?」  蘭磨は隣にいる轍に声をかけると、彼は明後日の方を見て言った。 「俺じゃねえ」 「本当か?本当なのか?本当なんだろうなぁ?」 「本当三段活用ぅ!いやほんと、マジで俺じゃないから!」  彼の隣の女子がスペードのジャックを出す。このままではまずい、と蘭磨は冷や汗をかいた。正直、今回はそもそも貰った手札がよろしくなかったのだ。この人数だとどうしても良い手が来にくいのは間違いないことなのだが。  早々にパスも二回してしまったし(自分たちのルールではパスは三回までと決まっている)、このままダイヤが出てきてくれないのは大いに困るのだが。 「本当に俺じゃなんですううう……」  轍は眉を下げて、自分の手札を公開した。 「ぶんちゃん!出せない!負け!」 「うーわ」  マジだったらしい。蘭磨はさすがに同情した。パスを三回使い切って出せなくなってしまった人は、その時点で持っていた手札を全部公開し、空きスペースに並べることになるのだが。  見事に彼の手札には、Aと2しかない。これが大富豪だったら絶好の手札だっただろうに。 「俺は思ったんだぜ、蘭磨。今からゲーム、大富豪に変えてくれないかなあって……」 「……同情する」  なお、涼しい顔であっちもこっちも止めていたのは秀だった。  隣の班からは、信花の悲鳴のような声が聞こえてきている。 「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!なんでじゃ、なんで儂が出したいところに悉く……!ジョーカーが余ってしまったではないかああああああああ!うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!」  なお、パスを使い切って負けた者より、ジョーカーを手札で余らせてしまった者が最下位になるルールである。  信花はどうやら相当トランプ系のカードゲームが苦手らしい。さっきもババ抜きで最下位になっていた。このままだと、罰ゲームでモノマネをするのは彼女ということになってしまうがいいのだろうか。 ――まあ、あいつならそれもそれで面白がりそうだけど。  とりあえず今は自分の心配をするべきか。蘭磨はため息まじりいに、“パス3”を宣言したのだった。
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