愛逢月〜君を想う〜

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   ーー藤次さん。  ーーー藤次さん。  …またや。  暗闇の中に響き続ける、絢音の声。  ホンマに、毎晩毎晩、こんな夢見る自分が未練がましゅうて、嫌になる。  さっさと起きて現実を見なと思った矢先やった。 「藤次さん…」  えっ…  不意に耳元で聞こえた、甘い声と、忘れかけてた、白梅の香り。  振り返ると、そこにいたのは… 「あや…ね?」  暗闇にぼんやり咲いた花のように、笑って立ってる、あの夜と寸分変わらない美しい君を見つけた瞬間、駆け寄り、抱きしめようと手を伸ばしたが、何かが邪魔をして、手は空を切る。 「…絢音…絢音!!迎えに来てくれたんか?!ごめんな、ずっとずっと待たせて!!今行くから、せやから…」  言うても、距離は縮まらず、悔しくて悔しくて唇を喰んでいると、絢音がふっくりと微笑む。 「藤次さん。急がないで。私ずっと、待ってるから。ずっとずっと、姿は見えないけど、傍にいるから。だからもう、私の事で、泣かないで…」 「嫌や!!今すぐ連れて行ってくれ!!俺は、俺はお前を…」  瞬間、花が舞い上がり、視界が真っ白に染まり意識が遠のいていく。 ーー藤次さん、好きよ。
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