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しかし、私が暴れても、大きな声を上げても、二人はクスクスと笑っている。
その美しい顔がなぜか余計に恐怖を感じさせるのだ。
すると、その一人が私に向かって声を出した。
「…お嬢様、そんなに暴れないでください。お怪我しますよ…」
私がいくら暴れても、車はどこかに向かって走り始めている。
もちろんドアは開かない。
そして私が暴れているうちに、車は大きなお屋敷の前に到着したようだ。
私は車から降ろされた。
すると、目の前には品の良い女性が、何故か涙を浮かべて立っているのだ。
ちょうど私の母親くらいの年齢だ。
その女性は私に近寄ると、いきなり私の両手を握った。
女性の瞳からはポロポロと涙が頬につたっていた。
「…恵美さん。会いたかったわ…」
まったく意味が分からない…
なぜ、私はここに連れてこられたのか…
この人たちは誰なのか…
(…誘拐?それともドッキリ?…)
「恵美さん、外は少し寒いので、中に入りましょう…」
その女性が、私に声を掛けてお屋敷に入っていくと、私はまた二人の男性に両側から腕を掴まれてお屋敷に中に連れて行かれた。
そのお屋敷は、西洋建築の古い洋館でその広さに驚いた。
玄関に家が一軒建ちそうなくらいだ。
よく見ると、壁や窓のあちこちに細かい彫刻が刻まれており、とても美しいお屋敷だった。
かなり古いお屋敷のようだが、手入れが行き届いている。
長い廊下には所どころにステンドグラスの窓がある。
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