3

3/15

811人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
「頑張りすぎたから、少しくらい休んでもいいって。ひかりは大丈夫。生きてていいよ。ってか俺のそばにいて欲しいから、生きててよ」  できないことは、やらなくていい。できることからやればいい。どうしてもやってみたいなら、一緒にやり方を考えればいい。彼はそう言って、くしゃくしゃに泣く私をもう一度強く抱きしめた。 「わたし、わたし、いつも……いつも、置いてかれちゃう、の」 「うん」 「……かなしい、よ」  いつも、いつだって大切な人が私を置いて行く。さようならさえも言わせてくれないうちに、星のように流れていく。  すべての思い出が美しくて、美しすぎて、その光が消えるたびに心が砕けてしまう。 「どうして、置いていかれちゃうのかなあ」 「ひかり、それはさあ」  誰も知るはずがない問いに、彼はすぐに答えをくれた。まるでその答えが、当たり前のものみたいに。誰もが知っているこの世の摂理かのように。 「みんながひかりを生かしてるんだよ」  その答えの美しさで、私はまだ息を続けている。 「いかして、る」 「うん。みんな、ひかりを連れてかなかったんだろ。一緒に連れて行けたのに、みんな置いて行った。……ひかりに生きていて欲しいから。みんな、ひかりのことが大事で、ひかりのこと、すげえ好きだからじゃん」  あなたの魔法は、どんな暗闇の中でも決して砕けない。
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!

811人が本棚に入れています
本棚に追加