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 普段私がこういう若い男性俳優のマネジメントを受け持つことは滅多にないのだが、誰よりも世話になっている相原に頭を下げられて、無下にできるはずもない。 『それにな、花宮。お前もそろそろああいうのを受け持っていいんじゃないか』  ふいに病室で見た相原の真剣な表情が脳裏に映ってすぐにかき消した。 「いやそれはマジでないです。愛子ちゃんが言ってましたよ。花宮さんがマネだと全部うまく行くって。俺に貸し出すのが惜しいとか散々言われてますからね。あと、これ以上相原さんとむさ苦しい巡業はマジで勘弁です」 「えー。愛子ちゃん、嬉しいこと言ってくれるな。あと、相原さんそれきいたら泣いちゃいますよ?」 「え~、泣かないですよ。ほんと、あの人は俺のスケジュールをいじめるのが趣味ですからね」  げんなりした表情を浮かべながらも岡田は楽しそうに語っている。これからの成長が期待されている俳優らしい笑みがあまりにもまぶしい。目が潰れてしまいそうだ。 「あはは。そうなんですね」  記憶の奥底から忘れ難い笑みが思い出されそうで、ゆっくりと首都の道路を滑りながら真剣に相槌を打っているふりを続けていた。 「……うわ、大和さんまたデカい広告やってる」 「うん?」 「星大和さんですよ。え、花宮さん知らないっすか?」 「あ、ううん。もちろん知ってるよ」  まさかその話題が出てくるとは思わなくて、思わず口を挟んでしまっただけだ。  ちらりとバックミラーに視線を向けて、少し前に私が見たものと同じ広告に目を奪われているらしい岡田の表情を見遣った。  まるで少年のように目を輝かせて見上げている。
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