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「星、見んのもいいけど、俺がいるときにして」
「ええ? なにそれ」
「ひかりが起きてる夜は俺も一緒に起きるし、俺が寝るときはひかり抱いて寝ないと居心地悪いって意味」
すべての夜を一緒に越えたいなんていうロマンチックな言葉を、大和は平然と笑って言った。私の目の前に小指を差し出して首をかしげる。
「な、いい子のひかりちゃんと俺の約束」
まるで愛の告白みたいだ。朝日に照らされた笑みが眩しい。眩しすぎて、屈む彼の頬をつまんだら、彼は目を丸くしてさらに笑った。
「なにこれ。痛え」
「さっきの仕返し」
「そんなに痛かった? ごめんな。優しく抱きしめてやろっか?」
あくまでも差し出した小指を下げることなく笑われて、鈍痛が全身に広がるのを無視しながら彼の手を押し返した。
「約束は?」
「スケジュール忘れてたなんて嘘吐く人とは約束できませ~ん」
軽い調子で言いながら大和の目の前から抜け出し、部屋の中に入る。彼がどんな顔で私を見つめているのかなんて、知りたくない。知ってしまったら、心臓が止まってしまいそうだから。
私がリビングに入ると同じように後ろから近づいてきて、私の肩に触れようとする。彼はよく私の体に触れる。それは、そうすると私がどれくらい震えているのか、どれくらい体温が下がっているのかわかるからだ。他の意味なんて何もない。
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