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大和の手に引かれ、ダイニングチェアへと腰を下ろす。彼はわざわざ私の隣の席に腰掛けて、箸を手に取った。
「うまそ。いただきます」
丁寧に手を合わせてから箸を伸ばす。大和は私が料理を振る舞うと、かき込むように食べたり、大口を開けて食べたりすることがない。
一つひとつを丁寧に食べる上品な人だ。朝食を嚥下する姿をぼんやりと見つめていると、黙々と食べ続けていた大和がこちらを振り返った。
「ん? 何見てんの」
「見ててって言ったじゃん」
「はい、おすそわけ」
「話聞いてる?」
屈託なく笑って、卵焼きを目の前に差し出してくる。卵焼きは大和の好きなおかずだ。
「口開けて」
「くれるの?」
「そう。うまいから」
大和は自分の好きなものでも、簡単に手放したり分け与えたりできる。その優しさが胸に突き刺さって離れない。
何も言えずに口を開くと、優しく卵焼きが押し付けられて咀嚼する。いつも通りの自分の卵焼きだ。彼は私が食べ終えるまで可愛らしく首を傾げて私の反応を見つめていた。
「何見てるの」
「ひかり、口小せえから見てて面白い」
「どういう意味!?」
「もっと食ってるとこ見せてって意味?」
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