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おかしな趣味があるものだ。訝しんで見つめると、大和はおかしそうに声をあげて笑っていた。
「こっちも食ってみて。うまいから」
「作ったの私なんだけど……」
「マジ? 天才じゃん」
大和のために用意したものなのに、彼は積極的に私の口元へと料理を運んで笑っていた。
最終的には白米まで「世界で一番うまいから食って」と言いながら差し出してくるから、笑いが止まらなくなってしまった。
ささやかな会話を繰り広げながら、大和が綺麗にプレートに盛られた料理を平らげていくのを見つめている。絵に描いたような平和な朝だ。
「ごちそうさま。おいしかったわ」
「それはよかった」
「晩飯、俺のほうが早く帰ってこられたら作っとく」
「え? 大和が?」
「文句あんのか」
――目が回ってしまうくらい忙しいくせに。無理をして、それを隠して倒れてしまうくらい忙しいのに。
胸の内に巡る言葉を噛み殺して、小さく笑った。
「一応期待しとく」
間違いなく、私が先に帰ってこられるだろうことを知っていて、曖昧に頷く。この三年間で嘘ばかりが上手になってしまった。
「まかせろ」
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