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大和は当然のように与えられる人だ。とても素敵な事だ。そういうところが人を惹きつけるのだとも思う。だが、私にもその素晴らしい優しさを与えて欲しいとは思わない。決して。
「じゃあ、そろそろいくわ」
プレートを持って立ち上がった大和がちらりとデジタル時計を見た。同じようにその場に立ち上がって、美しい瞳を見上げる。
「片付けておくからいいよ」
「いや。これくらいするって」
片手で私の髪を撫でてあっさりとキッチンに足を向ける。
優しいね。大和はいつも、どんなときにも感謝を忘れないよね。そういうところが私は――。
「ひかり?」
いつもならそのまま玄関に向かうはずが、大和は私の目の前に戻ってきて、私の顔を見つめた。どういう目で大和を見つめていたのか知られてしまったような気になって慌てて口を開く。
「なに? なんかへん?」
「いや。怒んねえの?」
「え? あ……」
すっかり忘れていた。私の表情を見て大和もそれを悟ったのだろう。喉を鳴らして笑って、私の頭をくしゃくしゃに乱した。
「ちょ、っと」
「スケジュール忘れてたってのはまあ、確かに嘘。ごめんな」
大和は私の頬に手を添えて体を屈め、あっさりと喋りだした。まるで、いつでも私には自身の心を開示することができるのだと示しているかのようで、眩しさに目を瞑ってしまいそうだった。
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