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嘘で塗り固めて、最後までのカウントをどうにか長引かせようと必死になっている私とは違う。
何も言えずに見つめていると、大和は私の頬を撫でて言った。
「でもさ、嫁が弱ってたら頼ってほしいと思うのが普通だろ。だから今後も晶が悩んでりゃ嘘ついてでも側にいたいし、それで晶が同じように俺のこと心配してこうやって時間作ってくれんなら、そんときは一緒に飯食わせてよ」
分け与えて欲しくなどないと思うのに、大和はいつも差し出そうとする。
その眩しさに焼かれて死んでしまいたい。この胸の内に残る感情を砕いて欲しい。
私は砕けたい。
ばらばらに砕けて、この心に大和への感情が何一つ残らないよう、散り散りになりたい。そうして私の汚い心は大和の手に拾われず、ひっそりとこの世から消えてなくなってしまいたい。
いらないものとわかっているのに捨てられないから、誰もがもがき苦しんでいる。
息苦しさを隠して頷いたら、大和は子どもみたいに笑った。
「うし、それならよろしい。素直でいい子のひかりちゃん」
「それ、最近の流行り?」
「俺のなかで」
「なにそれえ」
本当に楽しい時、大和は子どものような無邪気な笑みを見せてくれる。あどけない笑みが眩しくて目を細めると、優しく頬を撫でられた。
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