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「ドラマの練習なわけないだろ」  大和の熱っぽい声が耳元に囁かれるのと同時に、再び彼の携帯が鳴る。その音に弾かれるように離れようとしても、すぐにうなじに手を入れられて瞬きのうちに唇が奪われた。  熱を移すように唇を合わされ、逃げようとするとさらに角度を変えて食まれる。うなじを撫でられて、わけもわからぬうちに背中が壁に触れた。  酸欠になりそうで眉が歪む。  どうにもできずに大和の手を強く握ると、ようやく拘束から解放され、力が入らずずるずると座り込んだ。 「な、なに、とつぜ、ん」  混乱しながらもどうにか目の前にしゃがみ込んだ大和を見上げる。その視界の端に彼の濡れた唇が映った。  何か悪いものを見てしまったような気分だ。少しも見ていられなくて、無意識に顔が俯く。  私の気など知らずに、大和は囁いた。 「ひかり、こっち見て」 「な、いやだ。こんな朝から変なことする」 「はは、じゃあ、やまとくんは悪い子だな」 「電話、鳴ってるってば」 「悪い子だから無視して嫁のこと可愛がろうかな」  大和は電話など全く出る気がない。さらに俯く顔を上げさせるように顎に触れられて、慌ててその手を掴んだ。
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