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 街の喧騒が混じった声が聞こえる。その声が、確かに昨日も聞いた水野愛子のものであることを感じて、張り詰めた息が解けた。  生きている。彼女はまだ、私と同じ世界にいる。その奇跡に泣き出してしまいそうで、必死に堪えた。 「それは全然大丈夫だけど。本当に怪我してないの?」  のろのろと立ち上がり、髪を結んでから仕事用の鞄を引っ掴む。 「あはは、してないよ」 「……本当に? 少しもしてない? 嘘吐いたら怒るんだからね」 「してないしてない。ってかひかりさん怒ったとこ見たことないし」 「嘘だったら怒るよ! 今から確かめに行く」  誰もが『行ってきます』と言って戻らなくなった。もう二度とこんな思いはしたくない。私の真剣さが届いたのか、水野愛子は少し黙り込んでから現在地を囁いた。  場所を聞いてすぐに部屋を飛び出し、車に乗り込んだ。なるべく近い道を選んで車を走らせ、十分もしないうちに目的地に辿り着く。そこから走って建物の中に入り、目の前の人影に思わず大きな声を上げた。 「愛子ちゃん!」 「あ、ひかりさん」  たしかにその場所に、水野愛子は存在していた。  警察署の長椅子に座っている彼女を見とめた瞬間、堪えられずに体が動いた。 「ひかりさん!?」  立ち上がりかけている水野愛子の体を抱きしめて、めいっぱい息を吸い込む。  ここにいる。確かに生きている。今度こそ私はどうにかして間に合うことができた。 「よかった……。よかったぁ」
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