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「ええ? ごめんね! 追突されて事情聴取されてただけだよ!?」 「うん、うん」 「ええー、こんなに心配してくれるの」 「するよぉ……。もう、心臓止まっちゃうかと思った」  安堵して腕の拘束を緩めると、今度は水野愛子に強く抱きしめ返される。柔軟剤の香りと共に女性らしい甘い匂いがしていた。  優しい腕に抱かれて、もう一度確かめるように手を回し、華奢な背中を撫でる。 「ひかりさん、大好き」 「ええー。かわいいな。早朝の呼び出しも許す」 「やった。ありがとう。へへ、ひかりさん本当好き。迎えにきてくれてありがとね」  可愛らしくお礼を囁く彼女は、普段は脚光を浴びる俳優の一人だ。でもこうして私と話す彼女はごくごく普通の女性に見える。 「愛子ちゃん、おかえり」  昨日言えなかった言葉を囁いたら、彼女はおかしそうに笑って言葉を返してくれた。 「うん! ただいま!」 * * * 「愛子ちゃん、夜更かししたでしょ」 「え? わかる?」 「うん。薄っすらクマ出てるよ」 「やば」  想定よりも早くに事情聴取を終え、私たちは現場に向かう前に一度事務所に戻って朝食をとることにした。  近場でお弁当を購入してからミーティングルームに入り向き合うようにして座る。
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