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 まさか歳下に経験値のなさを生暖かく可愛がられるとは思わない。居心地の悪さに顔を顰めても、水野愛子はさらに前のめりになるだけだ。  致し方なく、しぶしぶと本心を打ち明ける。 「苦手っていうか、相手のある話だから、その、お相手に悪いというか」  第一そういうことばかりをしているわけではない。特に最近は私が避け続けているから、接触は少ないほうだ。  そんな内情を伝えるわけにもいかずもごもごと口を動かし、結局閉口してしまった。 「別にいいじゃん、マネージャーって出張も多いわイケメン多いわで旦那さん絶対嫉妬しまくりでしょ。たまに帰ってきてくれたらそりゃあねえ?」 「そりゃあねえってなに」 「いっぱいエッチしたいでしょ、普通に」  純情派の可愛らしい顔でけろりと囁いた。とんでもない色気にあてられて、思わず両手で顔を覆ってしまう。  ――大和が嫉妬を?  天下の人気俳優である彼が私に対してそのような感情を抱いているシーンなど少しも想像ができなくて、すぐに頭を振ってかき消した。目の前の女性は相変わらず私の反応を笑っている。 「愛子ちゃん、路線変更だ」 「こんくらい普通だよ。ひかりさんがウブなだけ」 「ほんと、本当に違うんだよ。彼はただ、夜景が見える海に連れて行ってくれただけなの。本当にそういうのは、ないから」
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