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「そうだよね。じゃあいいじゃん。色んな人と関わって、色んな気持ちを知っていいんだよ。私は愛子ちゃんにそういう風に楽しく生きてほしい。……もしも、もしも仮にね、絶対にないけど、いつかみんなが愛子ちゃんのことを嫌いになったとしたら。そのときだって私はずっと愛子ちゃんを追いかけて、ずーっと見てるんだから。ねえ、それじゃだめなの?」  息継ぎさえも惜しんで言い切ると、水野愛子はぽろぽろと涙を流しながら私の手を握りしめた。その手の温かさで、どうしてか目頭が熱い。  今から撮影に向かうはずの俳優を泣かせる自分に呆れつつ、彼女の瞳の輝きを見るとすべてがどうでもよくなってしまった。 「だめじゃないっ」  水野愛子は叫ぶように言い切って、ぐちゃぐちゃな顔のまま笑った。 「じゃあもう、好きな人を絶対に無理に諦めないで」 「う、ううっ、ひかりさんっ、ごめん、迷惑ばっかり……っ」 「全然大丈夫。むしろ昨日のうちに相原さんにオッケーもらってるから」  昨日、そのために事務所で深夜まで頭を下げて回ったことなど知らなくていい。私の言葉に、水野愛子はあんぐりと口を開いて、大きな目を三度瞬いた。  その反応があまりにも可愛らしい。珍しい表情に思わず気の抜けた笑みが溢れでた。
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