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「え、ええ? ほんとう?」 「バッチリ。こういうときに力になれなくてどうするの」 「ええ、イケメンすぎだよ〜」 「もう〜。泣いたら目、また大変になるでしょ」 「ひかりさんのせいだよ」  泣きながら驚いたり笑ったり忙しい。ハンカチを差し出したら、ますます泣かせてしまった。 「お相手、どんな人?」 「KRプロダクションの金城謙吾さん」 「KRの若手俳優だ」 「うん、星さんみたいな路線で売り出されてるみたい」 「……そ、っか」  何の気なく放たれた名前に一瞬気を取られて、小さく頷いた。同じ事務所のタレントではないだろうことは察していたが、まさかライバル事務所所属のタレントとまでは思っていなかった。  さらに相原に報告が必要だろうことを考えながら、いやにうるさい心臓をそっと押さえる。 「てかほんと、晶さんの旦那さんがうらやましいです」 「え? どうして」 「こんな優しい人、他にいないもん。いいなあ。幸せだろうなあ」  水野愛子は涙に濡れた瞳で、私を眩しそうに見つめていた。まるで彼が幸せだということを確信しているかのようで、胸に痛みが走る。  けれど実際はそうじゃない。 「そんなことないよ」  控えめに笑いながら言葉を返したら、水野愛子は楽しそうに口元を緩め、からかうように私の表情を見つめていた。
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