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「確かにスケジュールは過密でした。ただ、ここまで疲弊するほど詰め込んだつもりはありませんでした。申し訳ありません。私の管理不足です」 「いえ、そんな……」  まっとうな謝罪を受け、居心地の悪さに閉口してしまう。スーツ姿の彼と、エプロンを脱ぐことも忘れて、左右非対称のサンダルを履いている私は、どう見ても釣り合いが取れていない。  あまりにも不恰好な自分が恥ずかしい。そう思うのは、彼が隠すこともなく眉を顰めていたからだろうか。 「もう少し取り乱されるかと思っておりました」  彼の言葉はあくまでも淡々としていて、心を感じさせない。それなのに、彼の表情はわかりやすく私を咎めていた。いや、ただ嫌悪感をあらわにしていただけなのかもしれない。  私にやましいところがあるから、咎められているように感じるのだろう。  何も言えずに曖昧に笑みを浮かべる。私の反応を見て、彼は躊躇いなく口を開き直した。 「もう、心身の不調は解消されたんですか」  やっぱり知られていた。どうして知っているのだろうかなどとは思わない。当然の問いであるとさえ思う。 「星悠翔さんの墓参りにも、二回忌にも行かれたと聞きました。彼のことは本当に残念ですが、大和と彼は別人です」
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